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岩田 徹

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第173回 判断と決断

2024/04/05

春の選抜高校野球は、関東地区推薦で群馬県の、
高崎健康福祉大学高崎高等学校の初優勝で幕を閉じました。
正式名称の校名より、健大高崎の名称で近年、安定した力を発揮している高校です。
機動破壊という名称で呼ばれるほど、足で相手を撹乱し倒していくスタイルで有名でしたが、
今チームは2人の2年生投手が安定した力を発揮し、
高いレベルで投打のバランスが取れた好チームでした。
今大会から導入された低反発の金属バットの影響で、
外野手の頭を越えていくような長打が減り、ロースコアの接戦が多かった印象です。
これまでの高校野球とは違い、外野手の守備位置もかなり前になっていました。
接戦が多くなった今大会ですが、基本的な投手力、守備力、攻撃力はもちろんですが、
非常に重要な役割を担っていたのが3塁コーチなのではないかと、個人的には思います。
1点を争う試合が多く、得点機会も限られています。
低反発バットの影響で打球速度も代わり、かつ、外野手の守備位置も浅い。
連打や長打は見込めないかもしれない。
という状況で、一つの判断が試合の流れを大きく左右することになります。

3塁コーチは控え選手が務めることが多いですが、
その役割の重要性は高まっており、3塁コーチ専任でベンチ入りする選手もいます。
周囲の状況や試合の流れ、相手選手と自チームの選手との関係性、イニングなど、
様々な状況を加味して、瞬時の判断を行なっています。
3塁コーチの見せ場というと、ランナー2塁の場面での判断です。
内野の間を抜けて外野に到達する打球。
2塁ランナーのスタートのタイミングや走力、打球の方向と外野手の肩。
外内野の連携、次打者の調子や相手投手との相性。
外野手の肩は試合前のノックや試合中の様子を常に観察しています。
その中で判断、決断を行い、2塁走者を本塁に突入させるのか、それともストップさせるのか。
こうした瀬戸際の判断の場面が多く見られた今大会。
突入が成功したことで決勝点になったり、波に乗って追加点が生まれたり。
逆に失敗したことで相手が勢いづき劣勢になったり。
投げる、打つ、走ると試合に出ている選手がどうしても目立ちますが、
3塁コーチの判断力、決断力は野球の大きな魅力の一つだと感じています。

判断は状況を把握し、時間をかければ答えが見えてきます。
決断は状況を把握し、時間をかけても、その成功率は五分五分です。
どちらに転んでもおかしくないものを決めること、それが決断です。
3塁コーチは判断を常にしていますが、瀬戸際での決断を迫られた時、
その決断力の有無が大きく問われる役割です。

企業経営において、判断は現場リーダーや管理職で十分行えます。
状況を理解し、時間をかければどちらが成功確率が高いかがわかるからです。
一方で決断は経営者の仕事です。
時間をかけようが状況を理解しようが、結果は五分五分です。
その決断で差をつけるには、決断のスピードが重要になります。
高速道路の下り口で降りるのが正解なのか、降りずに進むのか。
どっちつかずでハザードランプを点灯させて停車することのないよう、
判断力、決断力の精度とスピードを高め続けたいですね。