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高松 秀樹

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第270回:JR東海が示した「織り込み済み」のマネジメント

2026/02/14

先日、東海旅客鉄道(JR東海)がリニア中央新幹線の津久井・藤野両トンネルの工期を約5年延長すると発表しました。
地質が想定よりもろく、追加工事が必要になったためです。
「開業時期には影響せず」との説明に、意外さを覚えた向きもあるでしょう。

当初2027年とされた品川―名古屋間の開業は、すでに2035年以降へと後ろ倒しが見込まれています。
静岡工区の問題が注目されがちですが、本質はより構造的です。
未着工区間がなお多く、日本の山岳地帯で長大トンネルを掘り進める以上、地質や地下水の変動リスクは避けられません。
今回の地盤の脆弱性判明も、その延長線上にある事象と位置づけるのが妥当です。

注目すべきは、同社のリスクに対する設計思想です。
開業時期を過度に固定せず、個別工区の遅れを全体工程の中で吸収していく。
巨額投資を自己資金中心で進める同社にとって、資金計画と工程管理は不可分です。
不確実性を排除するのではなく、一定の揺らぎを前提に全体を構築している点に、長期投資企業としての一貫性が表れています。

トンネル工事は本質的に難工事の連続です。
だからこそ問われるのは、「想定外」をどこまで想定内に取り込めるかという設計力ではないでしょうか。
今回の発表は、リニア計画が単なる工事進捗の問題ではなく、日本企業が超長期プロジェクトをどうマネジメントするのかという実践例であることを改めて示したと言えるのではないでしょうか。

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