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益田 和久

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第79回 先行投資

2022/09/08

AI(人工知能)技術の進化とそれに伴う活用範囲の拡大は、目まぐるしい早さで進んでいます。
つい最近では大手ゼネコン清水建設が、伝統建築などの火災対策に、AIを用いた検知・消火システムを開発したことや、NECの子会社が、SNSなどの公開情報を分析して、自然災害やサイバー攻撃の発生を迅速に検知するサービスを開始することが報道されていました。

以前より第一次産業での鳥獣被害(野生動物による農作物被害や人の生活圏内で発生する獣害)対策でAI活用事例はよく目にしていましたが、今や社会のあらゆる場面で活躍しています。
いずれも災害が未然に防げるというものであり、こういった分野に活用されるのは望ましいことだと思います。

私たちの日常生活には、先述した自然災害やサイバー攻撃だけではなく、いろんなトラブルやリスクがあります。
各々の立場に応じて、都度対応をしているのでしょうが、如何せんマンパワーには限界があります。
またどんなに上手く対応できていても、人間がやっている限り、ヒューマンエラーはつきものです。故に、安定して同一の作業をやってくれる、一定の分析作業をやってくれるAIをパートナーにしていくのはこの先必然のながれではないかと思っています。

ただ、誰もが仕事でAIを導入できるわけではありませんよね。
身近にいるSiriやAlexaは、音声入力をしてくれたり、アラームや音楽をかけたり、電源のオンオフはしてくれますが、せいぜいそのくらいでしょうか(もっと他にできることはあるかもしれません)。
それでも個人の作業効率アップやストレス軽減にはつながっています。

もっと大きなストレスやトラブルを回避する場合は、物理的も精神的にも応分の投資が必要です。
外部よりシステムを導入しようとすればそれなりのコストはかかるでしょうし、自分たちで開発しようとすれば時間的、労力的な投資も必要になってきます。
最終的には、コストパフォーマンスという点からの判断になると思いますが、先々にわたってかかったコストが回収出来るのであるならば、思い切った先行投資をしたほうがいいのではないかと思うことがよくあります。

新入社員を指導するトレーナーさんの研修に登壇することがあります。
新入社員の指導は、その接点を通して自分自身も原点に返れるということで、とてもやりがいのある仕事だとみなさんおっしゃいますが、一方でとても手間がかかる仕事でもあります。
新人の方は、一度教えたことも一回で習得出来るとは限りませんので、何度も教えないといけない。
トレーナーさんたちも、自分たちの仕事を抱えながら新人指導をしていますので、当然自分のことは後回しになり、残業も増えてしまうようです。

上司や先輩に相談すると、「マニュアルや手順書のようなものを整える(作成する)と、少しは指導の手間が省けるのはないか」とアドバイスがあり、そのようにしようかと思うと、残業時間制限の規制にかかり、結局は先延ばしの状態が続いてしまうといった話をよく聞きます。

しかし、こういった状況こそ、残業してマニュアルや手順書を作成して、業務効率化を図るという先行投資が必要なのではないでしょうか。
結果として、先々は残業時間だけでなく、新人に対峙する際のストレスやトラブルの削減にもつながるはずです。
コストと効果のバランスをどうとっていくのか。未来志向の視点から、職場でじっくり検討したい状況は、新人指導以外も様々あるのではないでしょうか。

AIの進化を通して、労働生産性を高めるための先行投資が大事だなと感じる今日この頃です。