若手社員向け研修のときに、自分が若手社員時代だった頃の経験をお話しすることがあります。
四半世紀も前のことになりますので、今と比べるとかなり仕事の進め方が違うこことを感じます。
その背景には(このコラムの主旨でもありますが)インターネットやPC、スマホを使っていないことがあると思います。
若手社員時代に金融機関で渉外担当だった私は、お客様訪問で外出が多かったのですが、連絡手段は公衆電話でした。ですから、お客様の連絡先が記載されている「電話帳」を常に持参していました。
また担当地域の地図や顧客情報ファイル(取引詳細や過去の商談経緯が掲載されているもの)も持ち歩いていました。さらに商談用のツールやパンフレットも携帯しますので、カバンはいつもパンパンだったような記憶があります。
バイクや自転車で移動していたので、それほど苦にはなりませんでしたが、持ち物の種類が多いこともあり、忘れ物をして営業店に取りに帰ることも多々ありました。
今は、スマホやタブレットに全て納まりますので、忘れ物をすることもなければ、カバンも薄くなっていると、金融機関関係者の方から聞きました。
当時は、分厚い顧客情報ファイルから必要な事柄を探し出したり、訪問先の場所を地図で調べたり、必要な営業ツールを準備することに、すごく時間がかかっていたような気がします。それも渉外活動の仕事の一つでした。
でも今は、デジタルデバイスを駆使することでその時間はかなり削減できます。
デジタル社会になって「自分でなくてもできること」が増えてきたのは確かです。以前、AI(人工知能)の進化について投稿しましたが、今後は、一定のパターンに基づいた作業をAIに任せていく機会はもっと増えていくはずです。
「何でもAIに任せると労働(雇用)機会を奪う」という論調もありますが、じぶんでなくてもできることが増えてきた今こそ「自分にしかできないこと」を再点検する必要があると感じています。
基本的に、AIに移行できる仕事というのは、
①AIの方が正確で且つ作業効率が高い
②AIが全てをこなせる
という類のものです。
ではこの2点に当てはまらないものとはどんな仕事なのか。
それは複雑、または手間のかかるコミュニケーション行為のある仕事と言われています。
AIが人間の感情や発言の裏側まで想定することができないから、そのような業務は代替困難なのだろうと推察します。
例えば、人を励ましたりすることや悩みに寄り添うこと、価値観の異なる人と話し合うことなどがあるでしょう。
どんなに時代が進んでも、AIを操作するのは人間です。
人間のパフォーマンスが悪いと、AIのパフォーマンスにも影響します。
お互いが、生身の感情をぶつけて啓発し合うことで、相乗効果を高めていく。
人は人と触れあうことで変化成長できることは、日常生活の多くの場面で我々は感じているのではないでしょうか。
それ以外にも、見えにくい感情を言語化したり、新しいアイデアを生み出すことなども、自分でしかできないことかと思います。
いずれにしても、これから先は「自分でしかできないこと」の領域の広さこそ、大きなバリューとして評価されてくると思います。
自分のスキルや行動を振り返り、日々仕分け作業をしていく必要があるなと思った今日この頃です。