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星 寿美

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第52回 「あいつはダメだ!」と思ってしまうと間違える

2022/04/11

ある社員(部下)に対して、ダメなところばかりが目につき「あいつはダメだ!」とジャッジしてしまう。
よくあることなのですが、それをしたら確実に間違えます。
何を?

【経営判断】を・・・です。

遅刻が多かったり、言われたことができなかったり、ミスが多いのに反省が見えなかったり・・・
そういうことが重なると誰でも「あいつはダメなやつだ」とジャッジしてしまうのは、よくあることですし、しょうがない部分もあります。

もし、そのジャッジが「何かいいことに繋がる」のでしたら、いくらでもジャッジしたらいいと思います。
しかし、そのジャッジは『悪循環』や『経営的判断ミス』に繋がっているのです。

上記に書いたような『手強い社員』はいます。
特に即戦力が必要な小さな会社ほど、多いと私は実感しています。
小さな会社に来る人材は玉石混同で、素晴らしい人もいる一方で手強い社員もいるものなのです。

なぜなら、大手企業は書類選考の段階で、バックグラウンドなど、ある一定の層にしかアプローチしませんが、小さな会社は、ある一定の層は関係なく、面接や作文などを通じて『やる気やフィーリング』などを基準に選考することが多いからです。
だから、玉石混同で、素晴らしい人もいる一方で手強い社員もいます。

しかし『どんなに手強い社員』であっても、縁あって入社されたら、成長し活躍してほしいですよね?

そして、よほどのモンスター気質や精神的な疾患を抱えているのでない場合は、手強い社員が成長し活躍することはできます。
しかもそのプロセスはそれほど苦労しません。
苦労してしまうのは「ダメなやつだ!」とレッテルを貼ってしまうからなのです。

社長の右腕となる人を間違えるところだった例

ある会社の例です。こんなことがありました。

加藤さん(27歳・男性)はIT関連の事業で起業し、大学時代の友人を誘って「一緒にこの会社を大きくしていこう!」と誓いあいました。
2年が過ぎ、若い社員も少しずつ増えていきました。
全員が20代という若い会社でした。

ある日、45歳のベテラン社員が入社します。
このベテラン社員は数年前に起業し一時期は30名の社員を雇用していた経験を持っていました。
その会社を訳あって畳んで、入社してきたのです。

このような経験があることと、兄貴肌(口調や態度も)の性格から、立場は中途の新入社員でしたが「俺がお前らを一人前にしたる!」くらいの勢いで「俺が社長の右腕」と豪語するようになりました。

その人と比較して、今まで右腕ポジションだった大学時代からの友人のダメさ加減が目立ち始めました。
そして、とうとう、その新人ベテラン社員と社長が「あいつはダメだ。やる気がない。仕事がいい加減だ!教育し直さないといけない!」と言い合うようになってしまったのです。

一度「あいつはダメだ!」「教育しないと!」というモードになると、そうとしか見られなくなってしまいます。

さて、実際に、元々の友人は『ダメだ!教育しないと!』という人材だったのでしょうか?

深く関わって分かったことが2つあります。

1つ目は、
その新人ベテラン社員は、昔、30名の社員を雇用し一時期は一定の成功を収めた経験を持っていたので、少しでも早く『幹部』になりたかったという思惑がありました。

若い人たち相手ならそのポジションも取れると考えていたのでしょう。
もちろん未熟な部分も多い若い人たちですから、情熱と実績から語られると、その人の思惑通りに教育されてしまうのも仕方ない側面もありました。

2つ目は、
実はその大学時代からの友人がいたからこそ、他の社員ががんばっていた、という事実は社長には全く見えていなかったのです。

社長は、若さゆえか、覇気があり積極的に見える『自分に似たタイプ』が出来る社員だと思えてしまい、マイナス口調のおとなしい人は評価が低くなってしまっていたのです。
さらに、社員たちの社長の前で見せる態度や言葉を信じていました。(どんなに「頑張ります!」と言っていても本心は違うことは多々ありますよね?)

そして、そんな社員一人一人の話を根気よく聞いて、支えていたのが友人だったのです。
また何かチャレンジするときに、リスクに対する対策を考えるのも役割でした。
社長と友人は、タイプが真逆だったからこそ、お互いにないものを補い合って、会社が成長していたのです。
友人こそが『真の右腕』だったのです。

けれど、自分が思い描く理想の態度、行動や言動じゃないから「ダメなやつ!」と、決めつけてしまいました。(ベテラン社員からの洗脳も大きかったと思います。)

この2つの要素に気づいて、それを社長にお伝えしました。
ちょうどお伝えした時期が、社長が新人ベテラン社員に違和感を覚え始めていた時期だったので、深く納得してくれました。

社長は
「一度ダメなやつ!と思ってしまうと、ダメだからなんとかしなきゃ。ダメだから教育しなきゃ。と相手を変えようとばかりして、どんどん本当のことが見えなくなっていった。それを今回のことで実感できました。」と話してくれました。

同じような思考・同じようなタイプなら2人もいらないですよね?全く違う思考・タイプだから補い合える。
それに気づかずに『最も大切な右腕』ポジションを変えようとしていたのです。
ダメなやつとジャッジしてレッテルを貼るだけで経営方針を間違えるところでした。

一般社員に対しても同じことが言えます。

この例は極端な例かもしれませんが、日常では多々起こっています。
ジャッジやレッテルは、本当のことを見えなくしてしまう側面があります。

『自分からはそう見えるけれど、本当はどうなんだろう?』
という視点はどんな時にも有効です。

また、本人の話を『ありのまま聴く』ということも非常に重要です。
決めつけている時は本人の話を『深く』は聞いていません。
自分が聞きたいようには聞いているのかもしれませんが、ありのまま聞けていないことが多いと実感しています。

今回のように幹部ではなく、一般社員でも同じです。
どんなにダメな社員だと見えていたとしても、その人の話を深く聴けるだけで解決すことは非常に多いものです。(それらの例もまた記事に書いていこうと思っています。)

と、書いていますが・・・
人のことはよく見えますが、私も自分のこととなると、つい人をジャッジし決めつけてしまうことも多いので、自戒をこめて今日の記事を書きました。あなたはいかがですか?