面接では、とても明るく前職でも活躍していたと聞き、リーダー候補で迎えた30代半ばの川端佳子さん。
入社3ヶ月後/6ヶ月後で行う個別面談の時に「こちらが笑顔で挨拶しても誰も返してくれない!」「こんなひどい職場は初めて!」「でも、辛いけど、頑張る。」というような話を延々としていました。
私は、気持ちに寄り添いながら、ありのままを受容し話を聴き続けました。
その後、他の社員さん全員と面談をしたところ・・・。
他の社員さんたちは、皆、川端さんとコミュニケーションを取ろうと、それぞれに頑張っていました。
でも、心折れてしまった方、傷ついてしまった方など全員が『モヤモヤ』を抱えていました。
さて、こんな場合、誰かが嘘をついているのでしょうか?
いいえ、全員が本当のことを話しているのです。
最初に「誰も挨拶を返してくれない。」「無視されて辛い。」と訴えていた川端さんの辛さは本当です。
でも、その前に、川端さんの独特のコミュニケーションに周りの人たちも傷ついていました。
無視しているのではなく、もうどうしたらいいのかわからない状態でした。
例えば、川端さんに仕事が集中した時に、川端さんを慮って「お手伝いしましょうか?」と声をかけると「私には出来ないってことですか?」などの返事に、優しい気持ちで声をかけた先輩の方が傷ついていた、など。
そういうことが重なり、みんなは、どう接していいのかわからずにビクビクしていたのです。
そのような状態になるまで、周りの方々は、とても努力されたそうです。
例えば、ある先輩が、川端さんの話をちゃんと聴こうと時間を作ったのですが、それに対しては「業務時間外に拘束された!」と川端さんが上司に訴えに行き、上司から先輩が事実確認をされていました。
さまざまな努力、理解しようと試みた気持ちが、川端さん側の主観からの解釈で、ことごとく傷つき、もう壊物に触るようにしか接するしかない、という状態になっていました。
その状態が、川端さんからすると「誰も挨拶してくれない!」「辛い!」ということになっていたのでした。
よくあるトラブルメーカーの例
このようなことは、多かれ少なかれ、実はよくあることです。
全員と話すと状況が理解できますが、特定の人の話だけを聞いてしまうと間違えてしまいます。
しがらみにない、中立な立場の人間が一人一人と面談することで客観的な状況判断ができるのだと思います。
なぜなら、誰も嘘をついていない=その人の主観の中では、誰もが『正しい』からです。
だから「正しい・間違っている」「いい・悪い」という2元思考は間違えるのです。
全部正しい!それこそが物事をうまく行かせたり、まとめたりするコツです。
さて、話を戻します。
川端さんのような独特のコミュニケーションをとって、周りを翻弄してしまう人材が中途採用で入社してきたら、どうしたらいいのでしょうか?
このようなパターンは、割とよくあるトラブルメーカーの一例なので、どの組織で、いつ起こっても不思議ではありません。
トラブルメーカーの共通点
川端さんだけではなく、トラブルメーカーとなりうる人の共通点があります。
・自分が正しい。
・自分から見えている世界が正しい。
・人をコントロールしようとする。
・主観からの正義感で行動する。
・他人の言葉を自分に都合よく解釈する。
・都合の悪い部分は聞こえない。
さて、このような特性にある人に対して、どれだけ正論を話しても伝わらない、どころか歪曲されてこじれるのがオチです。
どうしたらいいのでしょうか?
トラブルメーカーを解決するコツ
否定せずに、ありのまま受容する聴き方で、話を聴き続けるということが、まず第一歩です。
私も、川端さんの話を4時間、ひたすら聴き続けました。
「そうなんですね?」「そうだったんですね?」と受容しながら、時に「これはこういうことですか?」「なぜ、そんな風に言ったんですか?」と意図や状況をより理解するための質問をしながら、とにかく聴き続けました。
そんな私に対しても「どうせ星さんは社長の手下だから、社長の言いなりなんでしょ?」などの言葉が出ます。
そういう時には「川端さんからは、そう見えるんですね。でも、私は社長の手下でなないですよ。会社をよりよくしようとしている同志と思っています。」と正直に答えます。
すると「そうやって、すぐうまいこと言って言いくるめようとするから信用できない。」と返ってきます。
でも、いいんです。
どんな言葉や答えが返ってきても「あなたはそう思うのね。」とありのままを受容し続け、そして、自分の正直な気持ちをただ、正直にお伝えすればいいのです。
相手の『無意識に仕掛けてくる心理ゲーム』に乗っかる必要はありません。
ただ、ありのままを受容し、自分は自分自身に正直にある、そういう在り方でコミュニケーションをとり続けてみてください。
そんな川端さん、最後に「こんなに理解してくれた人は初めてです。」と泣いていました。
さて。私は川端さんを理解したのでしょうか?
いいえ、全くと言っていいほど、理解していません(笑)にも関わらず、なぜ、川端さんは「理解してくれた!」と泣くのでしょうか?人間って本当に面白いですね。
私は、理解したとも、わかったとも、言っていないのです。
ただ「あなたはそうなのね。」というあり方で「そうなんですね。」「なるほど。」と一切の反論なしに聞き続けただけ。
だから内容はチンプンカンプン。
川端さんの話は理論破綻しているし、理解しづらいし、わかりませんでした。
でも、理解する、しない、は関係ないのです。
川端さんが私を信頼してくれた、というその一点が最重要です。
これは私だからできることではなく、このようなコミュニケーションをすれば誰でもできます。
信頼関係さえ築ければ、本音を話してくれますし、対話も深めることができます。
川端さんにとって、一番の幸せを一緒に考えて対話を深めていくと、自ずと解決策は見つかります。
川端さんの出した答えは「こんな小さな会社、自分には合わないから、もっとちゃんとした会社に行くわ!」でした。
採用費をかけて、まだ仕事も覚える前に、みんなをひっかき回して辞められては、会社にとっては大損害ですが、他の社員さんたちはみんな心からほっとしたのでした。
そして、同じような人を採用しないためにどうしたらいいか?面接時にする質問、面接の仕方などの研究し、会社としても成長できたと思います。
ところで、もし、
川端さんに対して、ありのままを受容せずに、正論で対話していたら、どうなっていたでしょうか?
同じようなタイプの社員が『モンスター社員』となって、労基署に訴え大騒ぎになった事例もあります。
自分だけが正しい。自分の主観からの正義感から行動するので、こういうタイプと『対立』関係になると、本当に大変です。
まず正論は通用しないのです。
こういうトラブルメーカー(モンスター社員予備軍)への対応は、間違えると大変です。
ですので、今回の記事が少しでも役に立てば幸いです。