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星 寿美

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第114回 社員は嘘つきなのか?

2023/07/03

『嘘をつく社員をどうにかしたい』という相談を受けることがあります。

・やる気がないのに「やる気があります!」と言う。
・頼んだことをやってないのに「やりました」と言う。
・遅刻や欠勤の理由が明らかに嘘。
・叱られないために真実と違うことを言う。
・病気などのことを隠していた。

など、社員たちの嘘に「どうしたらいいのか」と悩むリーダーが多いのです。
『嘘』に対して『どうしたらいいのか?』と言う意識だと、なかなか解決は難しいと私は感じています。

そうではなく、
『なぜ嘘をつく必要があったのか?その必要を取り除けばどうなるか?』と言う視点で関わると、スッキリと解決することは多いのです。

例えば、ハキハキして声も大きく、笑顔が明るいTさん。
発達障がいのことを隠して「やる気あります!頑張ります!」と中途で採用されました。
しかし、遅刻を繰り返し、その理由が明らかに嘘。
よくよく話を聞くと・・・
『実は、薬を服用していて、睡眠をコントロールできなかった』と言う事実が発覚します。

Tさんは、どんなに強く叱られても、それほど傷ついた様子はなく、遅刻する度に、明らかな嘘をつくのでした。
どう接していいのか、リーダーの方が参ってしまう事態でした。

そこで、叱ったり教育したりする代わりに、話をしっかり聞いてみたところ、睡眠薬を服用していることや、発達障がいのことを言わないで入社したと。

なぜ黙っていたのか?というと、

・言ったら採用されないと言う大きな恐れを抱えていた。
・障がい者雇用などの情報を知らなかった。

と言う2つの理由が明らかになりました。

「黙って入社したことで、念願の採用は叶っても、迷惑をかけたり、仕事に支障をきたしたら、自分自身も会社も幸せじゃないですね?
正直に話して、採用もされて、お互いに幸せな形を模索した方が良くないですか?」

と言う話をしたところ「そんなことは不可能だと思っていた。だから仕方なかった。」と。
そこで、必要な情報をお伝えしたり、支援機関に繋げたり、その上でお互いにベストな形を一緒に考えて行きました。

また、理解されづらい『グレーゾーン』と呼ばれる人たちがいます。
病院などに行っても、障がいとか病気などの『診断』はつかないけれど、働く上で不都合なことが多く、本人も周りも大変な思いをしている場合です。
そして、そのような特性があるわけではないのに、嘘をつく社員もいます。
いずれも本人とっての大きな恐れを抱えていたり、痛い経験の積み重ねがあったりなど、必ず理由があるのです。

いずれの場合も「その人たちにどう対応したらいいのか?」ではなく。

『なぜ嘘をつく必要があったのか?その必要を取り除けばどうなるか?』

と言う視点で関わります。
すると、先程のTさんのように理由が見えます。
その上で、お互いにとって幸せになるためにどうしたらいいのか?を考えていきます。

嘘つきな社員がいるわけではなく、必ず、それぞれに『理由』があるはずなのです。
その理由は人によって様々ですが、その『理由』を理解して、初めて『どうする?』がわかります。

嘘をつくのはいけない!と責めたり教育したりする前に、本当の理由を理解する。
そこから始めれば『嘘つき』と言う社員はいなくなります。
その人にとって、仕方のない理由(外から見たら理解できない理由であっても)があり、他に選択肢を知らなくて『嘘』と言う手段を選択しているだけの人がいる、と言うことがわかります。

もちろん、嘘をつかないに越したことはありません。
けれど、それしか選択肢がなくて、本当に仕方なく、本人の世界の中では、ただ唯一の方法で一生懸命に頑張っているに過ぎません。
だから、他に選択肢があること。選択肢によって創られる結果がたくさんあること。
それを伝えて、一緒に考えてあげればいいと思うのです。

嘘に対しての対応、ではなく。
その奥にある『本当の理由』を明らかにして、その理由に対して、対応する。

『なぜ嘘をつく必要があったのか?その必要を取り除けばどうなるか?』

この視点があれば、一番いい風になります。もちろん一筋縄ではいかない時もあるでしょう。
けれど『嘘つき』に対応するよりはずっといい風になること請け合いです。