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深山 敏郎

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第179回 困ったときの老荘だのみ エピソード79

2024/11/19

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの178回目では、「余りあるを損して、足らざるを補う」を検討してきました。
老子は言います。
「天道はこのように、あり余るものを減らし、足らぬものを補う」と。

今回は「弱は強に勝つ」です。
老子は言います。
「およそ何が柔らかい、弱いといっても、水ほど柔らかく弱いものはない。そのくせ、堅く強いものにうち勝つこと、水にまさるものはない」と。

「弱は強に勝つ」とは何か

今回は老子の言葉「弱は強に勝つ」の意味をご一緒に考えましょう。

老子は言います。
「これは、水が弱さに徹しているからだ」と。

ブルース・リーの言葉「友よ、水になれ」が意味するもの

香港生まれのアクション・スター ブルース・リー(李小龍)は、「友よ、水になれ(Be water, my friend.)」という言葉を残しています。
彼の開発した武術であり哲学である截拳道(ジークンドー)の基本理念ともいうものが、この言葉です。
この考えは、老子を含む中国古典から彼が学んできた考え方であり、また、生き方です。

水のように柔軟に、また、弱い立場に身を置くことで見えてくるものがあります。
自分が強いと思っているうちは、まだまだ修行が足りないということでしょうか。
弱者に徹すると、世の中がきちんと見えてくる、そう彼は言いたかったのかもしれません。

老子はさらに「弱は強に勝ち、柔は剛を制する。この道理はだれしも知っている。しかし実行できずにいる」とも言っています。
「柔よく剛を制す」という言葉は、中国の兵法書「六韜三略(りくとうさんりゃく)」(周時代の太公望の作とされる)にも同様の記述があるとのことです。
太公望は、老子よりも恐らく500年程前の兵法家であり、軍師として活躍した人です。

柔軟性が重要

人生において、水のような柔軟性が重要であるということを、老子も言っているのではないでしょうか。
私たちは自分自身の考え方にとらわれ、なかなか柔軟になれないでいます。
それがビジネスの障害になったり、対人関係の軋みを作ってしまうこともあるでしょう。
そうした時にこの言葉を思い出して欲しいのです。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
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