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益田 和久

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第71回 働きやすさ

2022/07/14

先日の日本経済新聞に、社員が組織や仕事に愛着や働きがいを感じ、主体的に業務に取り組んでいるかを示す「エンゲージメント」を測定し、組織改善につなげていく企業が増えているという記事がありました。
エンゲージメントとは、「婚約」「誓約」「約束」「契約」などの意味がありますが、いずれも「深いつながりをもつ」ということになるでしょうか。

一般的には「企業における社員のエンゲージメントの向上」とは、「社員が会社に対しての愛着や貢献意欲を深めること」であり、シンプルに表現すると「働きがいを感じる、居心地の良さを感じる」ということになるでしょうか。
実際に働きがいのスコアが高い組織は生産性が高く離職率も低いようです。
社員がのびのびと働ける環境を整えることは、生産性向上や持続的な成長にもつながりますので、マネジメントには不可欠な要素だと思います。

ちなみに、昨年秋の経団連の調査によると、(経団連)会員企業でエンゲージメント向上のために重点的に取り組んでいる施策は、「時間・場所にとらわれない柔軟な働き方の推進」が最多で、「企業理念・事業目的の社員との共有」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」が続いているようです。

NTTグループが、日本全国どこに住んでいてもリモートワークで働ける制度を7月から導入したという報道もありました。
勤務場所が自宅というのが前提で、オフィスへの通勤圏内に住む必要はないそうです。
ちなみに出社は“出張”扱いになるようですね。
全国区の組織ですと転勤がつきものですが、単身赴任や長距離通勤のようなこともなくなるわけですから、働きやすさという点では確実に上がるはずです。
いろんな職種があるので、個人の状況で制度の選択もできるようですが、実際には運用しながら細かな修正をしていくのだと思います。

ただ考えておきたいのは、働きやすさや、やりがいというのは、制度やルールだけでなく、仕事の内容や社内のコミュニケーションといったものと会わせて考えていく必要はありますよね。
若手からすると、新しいことにチャレンジしたいとか、適宜上司先輩のアドバイスが欲しいというニーズがくみ取ってもらえなければ、やりがいは感じられませんよね。

中小企業のお客様から、ここ数年継続して相談をいただくテーマが「離職防止」や「社員間のつながり(関わり)の強化」というものです。
NTTのようなフルリモート施策がとれるわけではありませんから、他のやり方で働きやすさややりがいを感じてもらえるような施策を講じていく必要があります。この場合、どんなところに不満があるのか、物足りなさを感じているのか、このあたりのヒアリングから着手するのですが、どの企業でも同じような状況に遭遇します。

それは、事務局側が想定していなかった要望や不満が出てくることです。
そして事務局側も、その要望や不満に対して、なんで言ってくれなかったんだ、なんで気づいてあげられなかったんだという気づきもあり、結果として社員の声に耳を傾けるということこそが、働きやすさややりがいを創出する出発点なんだと思います。

働き方改革という言葉は定着してきましたが、コロナ禍以降、仕事への向き合い方や他人との関わり方へのメンタリティも変化が出てきました。
ここから先、チームとしての生産性向上や新しい時代に向けたイノベーションを起こしていくには、働き手が主体的に、自分らしく、イキイキと取り組める環境設定は不可欠ですね。
会社、また管理職はそうした環境の設定や運営、維持向上がますます求められてくると思います。
ただ、あくまでそれは、社員同士の信頼関係やコミュニティがあってのことですし、人事教育を生業にするものとして、どこまでも人と人の関わり方、向き合い方はこだわって提案をしていきたいと思う今日この頃です。