今まで関わった経営者の方々から多く聞くことです。
「社員に対して、様々な研修や手法を取り入れるなどして、経費と時間をかけても、思ったような成果が見えない。」
「研修の満足度は高く、内容もいいのにもかかわらず現場レベルで活きていない。」
「今までもコンサルタントさんに来てもらったこともあるし、研修も定期的に受けてもらって教育には力を入れている。だから今回もそんなに期待はしていないんだ。」
このような声を何度も聞いてきました。
(もちろん、そうではない方々もいらっしゃいました。)
また、社員さんたちからも、
「研修自体は勉強になるし、いいんだけれど、それを現場でどう活かせばいいかわからない。しばらくすると忘れているかも・・・。」
「研修で学んだことを実践しようとしても、研修に出ていない人たちに同じことを伝えようとしても難しくて、温度差が辛い。」
「たくさんの研修を受けさせていただいて、社長には感謝している。こんなにしていただいているのに、なかなか自分が変われない。本当にダメな私・・・。」
などという声を聞きました。
また、『朝礼のやり方』『〇〇の手法』などの制度を導入しても、社員にその本質が浸透せず、形だけを実践しているということが起こっています。そんな言葉を聞くたびに、本当にもったいないなぁと実感します。
まさに教育の賜物
私たちは、物心つく頃から
「親や先生のことを聞くこと。」
「勉強をして、テストの点数で評価されること。」
「先生や学校が期待していることに応えることで評価されること。」
「みんな同じことをする。」
という【風土】の中で成長してきました。
だから、研修や新しい制度を導入したときに、真面目に取り組みます。
それ自体は素晴らしいことなのですが、
例えば・・・
・「仕事だからやっている。」「言われたことをやる。」という意識で取り組んでいる。
・知識として理解し、テストをすればいい点数を取れるけれど『本質』を理解しているわけではない。
・「なんのために、それをやるのか?」という全体視点が少ない。
・自己成長のために、それらの教育を活かすよりも、評価されるために活かそうとする。
というような状態になっていることが多いのです。
まさに公教育で十何年間も身につけてきた教育の賜物と言えると思います。
人は風土(関係性)で成長する。
周りがやる気のある人たちばかりだと、自然にやる気が出るし、周りがやる気がない人たちの中で、モチベーションを維持するのはすごく大変ですよね。
人は人からの影響を受け合って日々生きていますが、それは想像以上の影響力なのです。
まさに『人は人で磨かれる』ということです。
だから風土を変える!それが土台です。
その風土は『関係性』でできています。
そして、誰もが自分らしさを発揮できているときに、パフォーマンスも上がり、やりがいも感じます。
だから、組織が教育や制度を取り入れる前にすべきことがあります。
それは『関係の質』をあげることです。
そこをおざなりにして表面的なことばかりに目を向けているので、せっかくのいい研修も制度も活かされない、ということが起こっています。
まず『ありのままを受容し合う、信頼関係で繋がる組織』であるか、組織の人間関係を見直してみましょう。
難しいと思われているけれど、実は簡単なこと
「ありのままを受容し合う、信頼関係で繋がるなんて、すごく難しいですよね?」と言われることも多いのですが、それも教育の賜物なのです。
まず、一人一人が自分自身との関係を良くするところから始めれば、とても簡単なことだと実感しています。
自分を尊重できた分だけ、人を尊重できるからです。
自分の価値観や想いを大切のできれば「あの人とは考え方は違うけれど、私がこの考えを大切だと思っているのと同じように、あの人にとっては大切な考えなのね。」と尊重しあえるからです。
「ありのままを受容し合う。」と言うことは、人の考え方を受け入れることだと捉える方が多いのですが、そうではありません。
『自分をまず受け入れ、自分を尊重し、自分との関係がいい。』と言うところから始める、ということです。
どんな立場の方も、まず自分との関係性を見直すところから、人との関係性が始まります。
教育では教わらない、とても大切な真理です。
自分が何をしたら嬉しいのか、どんなことにやりがいを感じるのか?
そんな自分の感情を大切に育むことが必要不可欠です。
そうやって、自分を大切にできた分、人のことも大切にできます。
すると、多種多様な価値観の人たちが気持ちよく共存でき、さらに相乗効果も出せます。
今までは、自分を大切にする=わがまま、とばかりに全員を同じ型にはめて、はみ出ると「だめ」としてきました。
その弊害がたくさん起こっています。
その弊害の一つが「ありのままを受容する信頼関係でつながる組織なんて理想論で、実際は難しいよね?」と言うことにつながるのだと思います。
私は、さまざまな能力や特徴の人を同じような型に入れて成果を出す、と言う方がずっと難しく感じています。
学校教育のような点数で評価できる世界であれば、そのほうが簡単で都合がいいのかもしれません。
しかし、社会(仕事)は正解がたくさんある世界。
自分の頭で考えて、自分を活かしてパフォーマンスを上げて、点数ではなく『成果』で評価されます。
公教育の延長では、非常に難しいのです。
けれど人財育成でも『まず自分を大切にしましょう。』なんて誰も言わない。
それどころか、ダメな部分に目を向けて、そこを変えようとしています。
人のダメな部分を見つけるのは、とても簡単です。
人を批判するのは誰でもできます。
いい部分を見つけることは、本当はすごく簡単なことなのですが、教育の賜物で、難しくなっています。
一人一人が、自分との関係を構築し直すこと。
すると、人の得意な部分やいい部分に目を向けて、そこを伸ばす応援が自然にできます。
それは、一番簡単で、楽で、楽しい道です。
いまの(当たり前すぎて意識すらしていない)教育の方が茨の道なのです。
でも、誰もそんな教育を受けていないので『わからない』と言うのが現実です。
しかし、そこに気づいて始めた組織から驚くほどの成果が出ています。
最近ではティール組織などの本もベストセラーになったり、イエナプランなどのオルタナティブ教育もテレビや本で紹介されるようになりましたが、私は、それを34年前から実践し、さまざまな成果を出しています。
やっと日本でも気づき始めています。
誰だって、やらされ感でやる『作業』は面白くないとわかっているのに。
誰だって、自分の欠点を注意されるより、褒められた方が嬉しくて伸びるってわかっているのに。
それらを実感しているのにやり方を変えないのはおかしいですよね?
(褒める、と言う表面的なことを取り入れても逆効果なこともあります。形式ではなく本質の話です。すぐに『褒める教育』などと形だけが流行ることも問題です。)
不透明なこの時代、多種多様な人財を活かせる組織が進化し成長していく時代です。
それは、一人一人が『自分との関係を気持ちよく構築し直し、お互いに尊重しあい、触発しあって成長しいていく関係=風土』を作るところからスタートです。
それこそが、制度を取り入れる前にすべきことです。