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益田 和久

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第286回 外食業の合格バックアップに思う、自学を支えるデジタルと、フラットな視点で考える貢献

2026/08/28

先日、日本経済新聞に「特定技能2号、外食が合格バックアップ 対策講座で『サクラサク』」という記事が掲載されました。人手不足が深刻な外食業界で、外国人従業員が「特定技能2号」の試験に合格できるよう、研修やオンライン学習で後押しする動きが広がっているという内容です。在留期間が最長5年の1号はすでに受け入れ上限の5万人に達しており、期限が来れば帰国せざるを得ません。一方、永住が可能で家族も呼べる2号を取得するには、2年以上の店舗管理補助の経験に加え、筆記試験の合格が必要になるといいます。

はじめにお断りしておきますが、「外国人受け入れの是非」そのものについては、政治的な思想や哲学にも深く関わるテーマですので、今回は一切触れるつもりはありません。あくまで、共に働く仲間の「学びをどう支えるか」という一点に絞って書かせていただきます。

正直なところ、私のお客様には外食をはじめとするサービス業が少なく、特定技能の制度にもそれほど詳しくはありませんでした。しかし今回の記事を読んで、労働力を維持するうえで2号取得の推進が欠かせないことは、痛いほどよく理解できました。

外食産業の人材確保は、私が想像していた以上に厳しいようです。記事によれば、6月の有効求人倍率は接客・給仕の職種で2.30倍、飲食物調理でも2.19倍と、2倍を超える水準が続いているといいます。だからこそ各社は、早くからタブレットオーダーやセルフレジ、配膳ロボットといったツールを導入し、働き方そのものを変えてきました。それでも、なお人手は足りない。競争に勝つには新規出店もコンスタントに続けなければならず、結局は物理的な「人の数」を揃えなければ商売が立ち行かないのが実情なのでしょう。そうなると、外国人労働者の確保はもはや絶対条件です。そして、せっかく働いてもらうのなら、長く働いてもらったほうが、あらゆる意味で望ましい。在留期間という法律の前提がある以上、2号の取得は、企業にとっても本人にとっても必然的な選択肢になっていくわけです。

聞けば、働くご本人たちの資格取得への意欲は総じて高いそうです。ただ、試験は決して簡単ではありません。自力で学ぶ場合は120ページを超えるテキストを読み込む必要があり、日本語の行間を読む力まで求められ、引っかけ問題も多く「普通免許の学科試験に近い」と評されていました。合格率は5割台にとどまるといいます。

そうなると、「どう勉強するか」、そして「それをどう支援するか」が大きなポイントになります。この点で私が思わず膝を打ったのが、学習塾のノウハウを生かした明光の取り組みでした。個別指導で培った「明光メソッド」を応用し、学んだ内容を自分の職場に当てはめて生徒自身に説明させることで、知識を定着させる。受講生の合格率は約8割に達しているそうです。「合格させる」という専門ノウハウを持っているのですから、これは実に理にかなっています。市場の変化次第では、今後この分野に学習塾業界がどんどん参入してくることも、十分に予想されます。

オンライン学習ツールも興味深いものでした。一風堂が導入した「ニモン」は、月額850〜1200円で短い動画を見ながら学べ、会社側は従業員の進捗や正答率をいつでも確認できるといいます。自学自習の時間が多くなる彼らにとって、「分かりやすい教材」は不可欠です。本コラム第268回で非正規雇用向けのオンライン職業訓練を取り上げた際にも書きましたが、通学の壁を取り払い、働きながら学べる環境をつくるうえで、オンラインという手法は大きな力を発揮します。そして教材の使い勝手は、AIの進化とともに、これからますます磨かれていくでしょう。第283回で取り上げたハンズのように、現場の知見を写し取ったAIが「隣に座る先輩」として学びを支える——そんな光景も、そう遠くないはずです。

そして何よりありがたいと感じたのが、ユーチューバーの存在です。記事では、日本語教師として働くミャンマー人男性が運営するチャンネルが紹介されていました。母国の政変で大変な状況にあるなか、「高い授業料を払う同胞の助けになりたい」と投稿を始めたそうで、再生回数が80万回に達する動画もあるといいます。発信する本人自身が苦労してきた背景があるからこそ、そこに込められる熱量は、なおさら大きいのかもしれません。考えてみれば、この分野に限らず、何かスキルを身につけようと思えば、たいていのことはもうYouTubeにあります。再生数を稼ぐ方もいますが、多くは「興味のある人に知ってもらいたい」という善意や、自身の記録として発信している方でしょう。国境を越えた無償の「お節介」が、誰かの学びを確かに支えている。デジタルが張り巡らせたネットワークの、最も温かい一面だと感じます。

さて、では私たち人事教育コンサルタントに、何ができるのか。記事を読みながら、そんなことを考えていました。「日本人の若者をどうマネジメントするか」というテーマもあれば、日本人に向けた「外国人材のマネジメント」というテーマもあるでしょう。いや、それだけにとどまらず、できることはまだいろいろとあるような気がしています。第284回で建設現場のDXを取り上げた際、私は、言われたことに応えるだけの受け身であってはならない、変化を自分事として学び、働き方や仕事の在り方そのものを提案していきたいと書きました。外国人材と共に働く現場が急速に増えていくのであれば、そこにこそ、私たちが貢献できる余地があるはずです。

世の中では今、「外国人問題」という括りで、何かと騒がしい議論が交わされています。しかし、その喧騒からいったん距離を置き、フラットな視点で目の前の現実を見つめれば、やるべきことは案外はっきりと見えてくるのではないでしょうか。共に働く仲間が一日でも長く、気持ちよく戦力として活躍できるよう、その学びと成長を支えていく。是非の議論には踏み込みません。ただ、自分にできることを、現実的な視点から一つひとつ考えてみたい。そんなことを、静かに感じている今日この頃です。

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