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深山 敏郎

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第74回 職場チームのレジリエンス(1)チーム目標の位置づけ

2022/11/15

前回までは、「経営者のレジリエンス」についてお話してきました。

今回からは「職場チームのレジリエンス」というテーマでお話をします。

職場チームのレジリエンスとは

個人にもレジリエンスがあるように、職場チームにも、組織にも、そして社会にもレジリエンスがあります。
前回までは会社内の個人にフォーカスを当てていました。
今回からは、職場チームに焦点を当ててみます。

職場チームのレジリエンスは、拙著にも書きましたように大きく5つの項目があります。

1.チーム目標がメンバーに理解されており、まとまりがある
2.チームメンバーのリソース(資源)が有効活用され、相乗効果が働いている
3.オープンなコミュニケーションが行われ、堂々と反対意見を出すことができる
4.メンバー同士が助け合う
5.変化や変革を歓迎する風土がある

今回からそれぞれについてご説明をしていこうと思います。
今回は第一番目の項目についてご説明します。

チーム目標がメンバーに理解されており、まとまりがある

組織(以後、分かりやすいように「会社」とします)には目標があるように、職場チームにも目標があるのが一般的です。
もちろん、なければいけないというわけではないのですが、組織である以上、職場チームにも目標があると考えてよいでしょう。
職場チームとはお互い顔が見える(オンライン会議も含む)働く仲間という意味です。
課という単位もあるでしょうし、係といった単位もあることでしょう。
旅客機のパイロットなどは、コックピットのキャプテン(機長)とコーパイ(副機長)が最小単位のチームであり、これがチームの原型と考えられています。

会社の目標とは、売上げ、利益、企業価値といった企業の長期・短期の利潤を追求するための目標もあれば、SDGsのように社会にどのように貢献するかということを掲げることもあります。
どちらでもOKです。
その上位概念には、社是、社訓、企業哲学などがあるわけです。

さて、話を職場チームの目標に移しましょう。
職場チームには、会社目標をブレークダウン、つまり小分けにした小さな目標があります。
逆から見ると職場チームの目標の集合体が部門目標や会社目標となります。

ドラッカーがMBOで言いたかったこと

経営学者ドラッカー(故ピーター・ファーディナンド・ドラッカー氏)が“MBO”つまり「目標による管理」という管理手法を提唱したと言われています。
このMBOは、正確にはManagement by Objectives through self-control(自ら目標をコントロールすることによる管理)という意味の個人の動機付け手法です。
それが良くいえば応用といいますか、曲解され続けて部下にノルマ達成を迫るための道具となったり、部下評価の指針として達成度で査定をするなどの道具に成り下がっています。

根本的に目的が違うのです。
ドラッカーは、旧来の上から業務や目標を押し付ける手法に限界を感じ、その正反対に組織のメンバー一人ひとりが自らの環境からするべきことをつかみ取って、必要な目標を自ら立案し、その進捗度合いをみてさまざまなコントロール(修正)を自分自身でかけていく、といういわば個人が自らの担当業務の経営者として自律することを理想としたのです。

ここでいうチームのレジリエンスに必要な「チーム目標」とはこういう性質のものなのです。
もちろん、会社経営が成り立たないようなチームあるいは個人目標であれば、上司と部下あるいは関係者がよく話し合って調和のとれた目標にしていくというプロセスが必要になります。
逆に会社にとって都合のよい目標であっても、個人が過労死するリスクを増大するということであっては成り立ちません。
最近、親友から聞いた話ですがGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple 注:Facebook, Inc.はMeta Platforms, Inc.に社名変更)のような巨大企業において、社員がランチタイム休憩はおろかトイレにも行けない(行きづらい)ことで膀胱炎になる社員が増えているといったことを聞いています。
もし本当のことであれば、人を使い捨てとして扱っており、極めて非人道的な社風ということになるでしょう。
真偽のほどは定かではありませんが、あり得ることです。

極端な事例を出したのですが、MBOやこのコラムでいう目標とはこうした非人道的なもの、あるいは一方的に企業の利益のみを追求するための使い勝手のよい道具ではありません。

「理解されていること」の意味

ここでいう「理解されている」ということは、十分に納得できており長期的にもその目標があることによって、仕事から生き甲斐が得られることを前提としています。
職場チームの全員がこのようにチーム目標を腑に落ちるまで理解できた時にはじめて自らの目標にもプライドを持つことができ、実行することができるのです。
この「理解されていること」の意味は、「まとまりがある」ということにも通ずるのです。

まとまりがある、とは
個人々々がチームの目標を深く理解し、自らやチームメンバー全員の目標ときちんと結びつけることができると、チームとしてのまとまりが出てきます。
いわゆる「蛸壺(たこつぼ)仕事」つまり、「隣は何をする人ぞ」といった場合にはそうしたチームのまとまりを得ることは出来ません。
各自がチーム目標を深く、そして幅広く理解できた時にはじめてまとまりが出てきます。

こうしたチーム目標がメンバー全員に深く、幅広く、あるいは多面的(三次元的あるいは四次元的)に理解された時に、職場チームがテニスやバドミントンのペアのように、あるいはサッカーワールドカップで優勝するようなチームの連携が生まれてくることでしょう。

 
次回は「チーム目標の作り方」ということについてお話をしましょう。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
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