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第1回 “違う”ということ(前編)

2020/12/17

 あなたは新しいことを学ぶのが好きですか?もっと言えば、純粋に“考える”ことが好きですか?このコラムは、僕が子どもから大人までさまざまな人たちとワークショップをする中で感じた、考えることがおもしろくなるようなきっかけや場づくりのヒント集です。 “当たり前”をちょっと別の角度から見つめてみましょう。

多様性の時代

新しい発想は均質な思考からは生まれません。年齢や文化、性別など同一の背景をもつ人たちから新しい発想は出てきません。「違い」が必要なのです。

これは、MITメディアラボ(※)の創設者の一人ニコラス・ネグロポンテ氏の言葉です。彼は、何か新しいことを成そうとする際には「違い=Difference」が大切だと言います。知的にも、文化的にも不均質な環境が、新しい発想を生むのだ、と。
以前アメリカに研修を受けに行った時、同じグループになったオレゴン州の小学校の先生が、「僕のクラスには29人の生徒がいて、19種類の言語が飛び交っているんだ」と言っていました。アメリカでは言葉や、肌の色、宗教なども含めて、一人ひとりが違うということが教育の前提になっています。そこから見ると、日本はまだ他者と違うこと=特殊なことという意識が強いように感じます。

違いを楽しむ場づくり

 僕は、ワークショップで “違い”と“間違い”を活かすということを大切にしています。違いというのは多様性です。自分とは異なる視点に気づくことは、自分の学びを深めるきっかけとなります。また、失敗や、現在の常識と異なる意見を否定するのではなく、そこから何がわかるか、それを次にどう活かせるかに目を向けることで、柔軟な課題解決力が育ちます。そして何より、違いも間違いも受容される場は、参加者に大きな安心感を与えます。
いま世界中で取り上げられているSDGs(持続可能な開発目標)のキーワードも「Transform(変革)」と「No one left behind.(誰ひとり取り残さない)」。大きな変革を生むために、一人ひとりの違いが尊重され、間違いからも学んでいくポジティブな学び方が求められています。

(後編に続く)

※MITメディアラボ:
米国マサチューセッツ工科大学 (MIT) 建築・計画スクール内に設置された研究所。主に表現とコミュニケーションに利用されるデジタル技術の教育、研究を専門としている。