第47回 言い訳ばかりする部下から学ぶ
2022/03/07
ある組織の部長(50代)は部下に対して「言い訳ばかりする!」「甘いっ!」と言うのが口癖でした。
外部の私にも「部下が何度言ってもやらない。」「報連相がない!」「注意すると言い訳ばかりする!」などと言います。
そこで私は、部下たちに面談をして話を聞いたところ、意外なことがわかりました。
部下たちは、甘いどころか、稀に見る根性の持ち主ばかりだったからです。
真面目で根性がある部下たちです。
さて、そんなある日、社長とその部長と他部署の部長たちと私でマネジメント会議をしました。
その部長は社長から「報連相がない!」と言われていました。
その時に部長から出てくる言葉が、まさに『言い訳』オンパレード。
もちろん、本人は言い訳とは自覚できていないのですが・・・言い訳でした。
そうなのです!
部下に対して「部下が何度言ってもやらない。」「報連相がない!」「注意すると言い訳ばかりする!」という、そのまま、自覚なしに当てはまっていたのです。
人は相手に『自分の一部』を見ている
私は、その対話がひとしきり終わった頃合いで、その部長に「今、おっしゃっていたことは、私は、全部言い訳に聞こえました。」と感じたままをお伝えしました。
部長は「はっ」とした顔をしました。
もちろん、私には責める気持ちは0%です。
ただ、その部長に気づいて欲しいことが1つだけあったのです。
私も含め、人は誰でも相手に自分の一部を見ています。
逆に言うと、自分の中にないものは、見えません。
だから「わ〜、なんて素敵なのだろう!憧れるわ!」と思う相手がいたら、その憧れる要素は、すでに自分も持っていると言うことです。
そして、今回のように「部下が何度言ってもやらない。」「報連相がない!」「注意すると言い訳ばかりする!」と部下に対して感じるなら、その一部を自分も持っている、と言うことなのです。
「人の振り見て我がふり直せ」と言う言葉があるように、人に対してマイナス感情を抱くときは、自分はどうなのか見直すチャンスです。
もちろん人の理解には『深さ』があります。ですから全く同じ理解で、同じ要素を持っている、と言うわけではありません。
要素の一部分だったり、もしくは『自分が認めたくない事柄』だったりもします。
自分が、自分で認めたくない事柄には、ほとんどの人が『マイナス感情として反応』します。
人に対して『嫌だなぁ』と感じたときは、ただ本当に嫌な場合と、もしくは、自分の中にある要素を自分が自分で認めたくない=否定している!と言う2種類の場合があるのです。
部下から学ぶ
リーダーだけではなく親や先生など、人の上にたつ人間は、部下(子どもや生徒)のおかげで、成長できるものです。
実は、部下を否定したり、ダメな部分を見つけて言うのは、どんなアホにでも簡単にできること。
リーダーが、どんなアホにでも簡単にできることをしていては、とても勿体無いのです。
大きな機会損失です。
なぜなら、自分が成長するチャンスだからです。
部下(子どもや生徒)を育てるフリをして、実は、自分が一番成長できるのです。
それは、どうすればいいのか?
ダメなところを見つけて言うのではなく(それは誰でもできる簡単なことだから)、まずは、相手をありのまま受容することです。
自分の中の『物差し』で相手をジャッジするのではなく、自分の物差しを脇に置いて、ただ、ありのままを受容する関わりをしてみましょう。
否定も肯定もジャッジもなく、ただ、ありのままです。
これ、やってみるとわかりますが。
これだけで、世界はだいぶ広がります。
自分の物差しから相手を見ていると、間違えがたくさん起こるんです。
本当は真面目で根性がある部下を『甘い!やる気のない部下だ!』と決めつけてしまう、この部長のように。
そういう『物差し』を横に置いて、ただありのままを受容する関わり方をすると、まず見え方が変わります。(この関わり方のコツは、他の記事で何度も書いているので、今回は割愛します。)
そして、相手の本音やアイデアを引き出す、良質な質問から、お互いにディスカッションしてみましょう!お互いに気づくことがたくさんあるはずです。
部下から学べば、リーダーとして、どんどん成長できるだけではなく、部下も自ら考えて動く自走する人材に育っていきます。
せっかくいい素質を持った部下を活かすも活かさないもリーダー次第。
そう!
組織はリーダーの捉え方や関わり方次第です。
たまたま、社長や他部署の部長たちとの会議で、このような場面になったおかげで、気づくきっかけができて、本当に面白い一場面、そこからの展開でした。
その部長は、部下を自分の物差しで決めつけることをやめて、対話ができるようになり、部下たち一人一人が自分らしさを発揮できる組織になりました。
おまけ
余談ですが、私は大学生(2022年現在)の息子がいますが『息子が、私の育ての親なのよ。』と豪語しています。
子どものおかげで人間になれた、とすら実感しているのです。
お互いに尊重しあい、ありのままを受容しあえる関係なので、息子が幼少期から、そして今も、対話が深まり、楽しく仲良く暮らせて本当に幸せです。
現代は、この『ありのままを需要し合う』と言うコミュニケーションの習慣がないことで、たくさんの問題が起こっていると私は実感しています。
私も、親や教師のコミュニケーションを『反面教師』にして試行錯誤し、ここにたどりつきました。
そして、多くの組織や教育現場、そして我が子で実証しています。
それは、ありのままを受容し、お互いに尊重し合いながら、クリエイティブな対話ができれば、どんな問題も気持ちよく解決していけるし、未来を創造できるのだという事です。
だから、この『ありのままを受容し、お互いに尊重し合いながら、クリエイティブな対話をするコミュニケーション』を広めることが私の使命なのだ、と日々実感しています。