子どもが減っているのに、子ども用品専門店が成長し続ける──そんな「非常識」を体現しているのが「西松屋」です。
今年度も「30期連続の増収」を達成したというニュースを見て、改めて同社の「戦略」をひも解いてみようと思うのです。
「西松屋のすごさ」は何より、少子化が進む地方や郊外のロードサイドを主戦場に選んだことでしょう。
普通なら「人口が減るエリアは避けるべき」と考えがちですが、彼らは逆に家賃が安く、土地に余裕がある郊外にこそ勝機があると見出し、安い賃料で運営費を抑え、自社PBで収益性を確保する。その結果、ロードサイド立地に最適化された低コスト・高効率の収益モデルをつくり上げ、商業施設内出店に頼る競合との差をじわじわと広げてきたのです。
この「ありえない」立地戦略が、成長余地を確保し続けた最大の理由かと。
もう一つ、感心するのは店舗の「動線設計」です。
西松屋の店に入ると、棚が一列にまっすぐ並び、端まで行かないと隣の棚には移れない。
スーパーや一般の小売店では、客を回遊させて購買機会を増やすのが常識とされるのですが、西松屋は違う。
子どもが迷子になりにくく、仮に迷子になっても見つけやすい。
この構造は保護者のストレスを減らすだけでなく、従業員の負担も減らす。効率と安全、目の前の「親と子」に寄り添った結果としての「逆張り動線」なのでしょう。
効率だけを追わず、マニュアルにとらわれず。目の前の暮らしと現場の声に向き合う。
西松屋が30期連続で増収してきたのは、非常識を恐れない現場目線の積み重ねがあるからこそだと感じるのです。