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木村 圭

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第12回 自分のモノサシを外す

2022/02/21

前回、『話す前に考える4つの前提』で構成などを考える前に必要な要素を紹介しました。

①どこで(状況)
②誰に(相手)
③何を伝えて(主題)
④どうなってもらうか(目的)

これら4つの前提のうち、特に『誰に(相手)』は重要です。なぜなら、どんな相手に伝えるかが明確でないと、そもそも話を理解してもらえなくなってしまうからです。

相手に理解してもらうためには、「これくらいならわかるだろう」という思い込みを排除すること。つまり、『自分のモノサシを外す』ことが必要です。

そこで今回は、自分のモノサシを外すためにどうすれば良いか、その考え方を紹介します。

知識のモノサシ

人が持っている自分のモノサシは、『知識のモノサシ』と『欲求のモノサシ』の2つがあります。

知識のモノサシは、自分自身の経験や学びを基準としたモノサシです。

例えば、相撲といえば我が国の国技で、日本人なら誰でも知っている競技ですよね。
しかし、相撲ファンの人と、相撲を単に知っているだけの人とでは相撲の知識に大きな差があります。

相撲ファンはよく「両力士、がっぷり四つに組んで動かないね」などと言いますが、「がっぷり四つ」を知らない人には「がっぷり四つに組んで動かないね」などといっても「?」という反応をされるだけです。

たったひとつの言葉ですが、自分の知識のモノサシを基準に話してしまうと、相手に伝わらなくなってしまうわけですね。

どんなに素晴らしい内容でも、相手に伝わらなければ意味がありません。なので、まずは「この言葉、ちゃんと伝わるかな? 相手は知ってるかな?」と考え、自分の中にある知識のモノサシを外すようにしましょう。

※ちなみにがっぷり四つというのは、力士が互いにまわしを引きあい、胸を合わせた状態を言います。

欲求のモノサシ

2つめの自分のモノサシは『欲求のモノサシ』です。

伝える側は「この話をしたい!」という欲求で話しているかもしれませんが、相手がまだその話を知りたい状態になっていないということがあります。

例えば、突然雨に降られたので傘を買おうとデパートに入ったとしましょう。
そこであなたは店員に「傘売り場はどこか?」と訊ねました。
すると店員は、こんな風に言いました。

「お客様、当店ではUVカットに優れた傘をご用意しています。よろしければご案内しましょうか?」

恐らくあなたは、「そんなことはいいから早く傘売り場を教えてよ」という気持ちになるのではないでしょうか。

つまり、この段階でのあなたは傘の機能などの話はどうでも良く、雨風しのげる傘があるかどうかをまずは知りたいと思っているはずです。

にもかかわらず、店員は「高機能の傘を勧めたい」という自分の欲求を基準に話してしまった。
店員が少しでも自分の欲求のモノサシを外して、あなたのモノサシで考えることができたなら、きっと「傘売り場はあちらです」と普通に案内できたことでしょう。

このように、自分の中にある欲求のモノサシを基準に話してしまうと、相手と話が噛み合わないということになってしまいます。

欲求は常に変化する

ところで次のような状況だったらどうでしょう。

あなたは傘売り場を訪ねたところ、店員がすぐに「あちらです」と傘売り場を案内してくれました。
そこには価格の違う十数種類の似たような傘が並んでいます。
この段階では、あなたにはどのような欲求が生じるでしょうか?

どれが良いのか、なぜこれだけ価格が違うのか。つまりどれが自分の買うべき傘なのかを知りたいという欲求が生じるのではないでしょうか。

この段階であれば、

「価格の差はUVカットなど機能の差によるものです。実は、雨の日でも30%ほどの紫外線量があると言われています。雨風をしのぐだけでなく、紫外線量も気になるということであればUVカットの傘をおすすめします。当店ではUVカットに優れた傘もご用意しておりますので、よろしければご案内しましょうか?」

と先ほどのように案内されても話を聞き入れることができると思います。

このように人の欲求というのは、状況によって常に変化するものです。
だからこそ、自分のモノサシではなく、相手のモノサシで考え続ける必要があるのです。

まとめ

今回は、自分のモノサシを外すために『知識』『欲求』の2つのモノサシについてお話しました。

思い込みを排除するというのは大変なことですが、少しずつでも「この人にとってはどうだろう?」と考えることで、自分のモノサシは外せるようになります。

自分ではなく相手のモノサシで考えることができるようになれば、心を動かすスピーチをしたり、納得してもらえるプレゼンができたりします。

ぜひ、実践してみてくださいね。