数年前、当時メジャーリーガーのイチロー選手と、
その後、東京五輪の野球で金メダルを獲得する稲葉監督との対談がありました。
野球選手として成功するためのトレーニングの話題でした。
稲葉監督から、
「今は体を大きくするトレーニングが流行っている。
大きくした体を活かして強く遠くに飛ばす。」というお話が。
それに対しイチロー選手は「全然ダメ」と即答。
人間が本来持っている体のバランスを崩してはいけない。
筋肉を大きくしたとしても、それを支え動かす関節や腱は鍛えられない。
だから体を支えられず怪我をしてしまう。とおっしゃっていました。
イチロー選手もかつて、ウエイトトレーニングを強化し、
体を大きくしたことがあったそうです。
大きくなった体を見て自分に酔いしれ、より体を鍛えなくなったそうですが、
いざシーズンが始まると春先に体が動かなかったそうです。
筋肉が大きくなることでスイングスピードが落ち成績が低下。
シーズン中は筋トレに割く時間があまりなく連戦になるため痩せる。
痩せることでスイングスピードが上がり成績も上昇。
そのようなことを6、7年重ねて出した結論が、
「人体を理解すること。本来持っている体のバランスを崩さないこと。」だそうです。
現代は、体を大きくする方法、鍛える方法、野球が上手くなる方法など、
情報が多すぎることも危惧されていました。
それに対し稲葉監督から、「その中から最短で上手くなる可能性もあるよね?」との言葉に、
イチロー選手は「無理だと思います。」とまたしても即答。
全くミスなしで到達することはないし、
仮に最短距離で到達したとしても深みが出ないと断言。
長年の経験から導き出した答えは、遠回りはすごく大事であること。
無駄なことは結局無駄ではないこと。
だからと言って無駄に飛びついている訳ではない。
その場その場では最適な選択をしているつもりだが、
後から思うと無駄だったな、と思うことが大切であり、
結局は遠回りすることが一番の近道なんですよね、とおっしゃられていました。
〜中小企業の採用・育成のヒント〜
合理的に物事を進め、無駄を一切排除して生産性を高めることを求められる世の中です。
調べればわかる答えであればそれでO Kでしょう。
たった一度の成果だけで良いのであれば、それもO Kでしょう。
ですが、継続的に成果を出し続ける、
場面や状況が変わっても高いパフォーマンスを示し続けるには、
確固たる成功の法則が持論化できていないといけないと思います。
そのためには振り返ると遠回りしてきた、という経験も必要なのでしょうね。