グループ・ダイナミックスとは心理学者のクルト・レヴィンによって研究された集団力学のことです。
集団において、人の行動や思考は、集団から影響を受け、また、集団に対しても影響を与えるという集団特性のことを言います。
要は、組織やチーム内での相乗効果で成果を最大限に創造することです。
そんなグループダイナミクスは、どうやって起こせるのでしょうか?
まず土台、そして実践について説明します。
まず土台
土台は『関係の質(=風土)』です。
関係の質とは、言葉の通り、一人一人の関係性のこと。
これは組織に限らず、親子・夫婦・友人・同僚・・・どんな関係でも言えますが。
例えば、フッとと思ったアイデアを「今思ったんだけどね・・・」と言って、気兼ねなく伝えられるのか、もしくは「言うと否定されたりして、めんどくさいことになるから言わないでおこう。」などと伝えづらいのか?
これは一例ですが、他にもあります。
ミスをした時に、すぐに報告できる雰囲気か、それとも出来れば隠してバレたくないような雰囲気か?
などの場面がバロメーターとなるかと思います。
感じたことやミスなどを気兼ねなく伝えられれば、関係の質は高いし、そうでなければ関係の質は低い、と言えるのかもしれません。
最初から、なんでも言い合える風土だったらいいのですが、現状で、感じていることなんて言いづらい!すごく気を使っている!という状況の『関係の質』を上げるのは、ちょっと大変ですよね。
でも、安心してください。
リーダーの関わり方を変えるだけで、どんどん関係の質が上がってきます。
組織全体なら社長が。部署なら部長が。チームならリーダーが。
そして、家族や友人だったら、気づいた人から。
どんな関わり方をしたら『関係の質』が上がり、グループダイナミクスを起こすことができるのか?実践についてお話しします。
そして実践
実践する方法として、①関わり方と②仕掛けの2つがあります。
①関わり方
相手の言葉をありのまま聴くこと。これが大原則です。
例えば、何度言っても同じミスをする社員に対して、どんな風に接していますか?「何度も言っているよね?」「どうして何度も繰り返すの?」「しっかりしてね。」こんなような投げかけをしていませんか?
何度言っても同じミスをする社員に対しては、
「何度もミスをして、本人が一番気にしているよね。」と相手の辛さを共感したり、また「新人の頃は、何度もミスしてしまうもの。ミス自体は大丈夫だから、より成長できるためのことを考えてみよう!」などと、ミスを責めているのではないことを共有した上で・・・
「そのミスが、どうしてミスなのかわかるかな?」→必要性・重要性を自分の言葉で語ってもらう。
「ミスしなくなるためには、どうしたらいいかな?」→対策を自分で考えてもらう。
など、相手に気づいて欲しいことを、質問によって、本人に言語化してもらう、というのがコツです。
人に言われたことをやるのは「やらされ感」ありますが、自分で言ったことは、自然とやろうとするものだからです。
このように、責める・責められるの関係ではなく、お互いに成長する仲間という関係の中で、気づいて欲しいことを本人が言語化するための質問を投げる。という関わり方。
これは、相手をもっと理解したい!という興味からの質問であって、詰問ではない質問です。
そして、相手の答えを「そうなんだね。」「そう感じているんだね。」と、ただありのまま受容します。
相手の答えが、浅すぎると感じたり、ポイントがズレているって感じた時には、さらに質問をして深めればいいのです。
どこまでも、相手を理解したいという興味からの質問と、ありのまま「そうなんだ」と受容する関わり方です。
「実際にやるのは難しい!」って声が聞こえてきそうですが、実は、習慣化してしまえばとても簡単なコミュニケーションなのです。
しかし、このようなコミュニケーションを、今までの教育やプロセスにおいて、自分自身がされていないので、難しく感じてしまう方が多いようです。
ちなみに「ありのままを受容する」とは、考えなどを理解したり、受け入れるということではなく、ただ「(あなたは)そう考えているのね。」と、ありのままを受け取るだけです。
人間は、本当の意味では誰も相手を理解することはできません。
人生のプロセスも性格も視点も、もっというと同じ単語を話していても、その言葉を使う概念も人によって違うからです。
だから、究極、理解しなくてもいいし、受け入れなくてもいい。
ただ「あなたは、そうなんですね。」とありのままを受容する、ということです。
そして詰問ではなく、理解を深めたいための質問をして、言語化をお手伝いするだけでいいんです。
違う言い方をすると『相手の思考(意識できている部分も無意識領域も)を整理してあげるだけ。』とも言えます。
この関わり方に変えるだけで、驚くほど関係の質が上がり、風土がよくなります。
まず、このシンプルな関わり方、試してみてくださいね。
②仕掛け
ただ関係の質がいいだけでも、成果は上がるのですがもったいないです。意図的な仕掛けがあることで、成果はもっと上がるからです。
まず人は達成感が好き、そして理論ではなく感情で動くという性質がありますよね。
まず心から共感するビジョンをイメージしてもらうこと。これは強力です。
心から共感する、同じビジョン(目的)に向かっている仲間だという意識が相乗効果をさらに高めます。
ビジョンをイメージできる形で伝えていますか?
そして、そこに辿り着くまでの目標数値をみんなで決めることです。
その具体的な目標数値を、どうしたら達成できるか?そのアイデアだしもみんなでやることです。
自分たちで作った目標やTODOなので、やらされ感はありません。
そして、大きな目標のための小さな目標(マイルストーン)もみんなで作り、それを一つずつ達成していく・・・。
そのプロセスで、いろんな問題が起こります。
その問題に取り組むから、そこに共通のストーリーが生まれます。
一人一人がそのストーリーの登場人物です。
問題が起こるからこそ、相乗効果には効くのです。
まとめると、共感する大きなビジョンをイメージしている。
そのビジョンに向かう仲間だという認識がある。そのビジョンに向かうための、大きな目標数値と、小さな目標(マイルストーン)そして、数値目標を達成するためのアイデアだし(TODOリスト)をみんなで決める。
TODOアイデアごとにリーダーを決めて毎月進捗会議を実施し、確実に数値目標を達成していく。
そのプロセスで様々な問題が起こったり、うまく行かないことも多々発生する。
それらこそがグループダイナミクスの要素となる!
そうやってプロセスでお互いに学び合い、触発しあい、成長していく。
私は、これらのプロセスを多くの企業で『ゴールツリー会議』として実践しています。
名称は『会議』なのですが、中身は『関係の質』『ビジョン』『数値目標』『アイデアだし』『進捗会議』『プロセス』など多岐にわたり、そこで起こるドラマにやりがいを感じ、勇気をいただいています。
やり方は一つではなく無限にあると思っています。
起こるドラマも人や環境が変われば無数にあります。
ぜひ自社にあう方法を見つけ、様々なドラマを楽しみ、グループダイナミクスを起こして大きな成果を出してくださいね!