第29回 「自分で考えてみて」の使い方
2021/10/31
リーダーや教育担当者が、新人に対して「自分で考えてみて」という時。
・聞けば教えてくれるという習慣がついて、自分で考えなくなるから。
・仕事をする中で、創意工夫する楽しさを知って欲しいから。
・リーダーとして、新人なりの答えを知り相手理解をしたいから。
・まずは自分で考えさせて、その後すり合わせした方が身につくから。
などの意図があるかと思います。どれも、素晴らしいことですね!
このような明確な意図を持って実行し、試行錯誤することは、リーダー・新人・組織にとってプラスになるかと思います。
ただ「自分で考えてみて」という場合、気をつけなくてはいけないことがあるのです。
・リーダーへの不信感につながる場合がある。
・新人の辞める理由になる場合がある。
一つずつ説明します。
リーダーへの不信感につながる場合がある。
まだ経験の浅い新人は、全体把握もできておらず、また見えていなことも多いわけですが、その状態で「自分で考えてみて」と言われると、上記に書いたような意図が分からずに、リーダーが「ちゃんと教えてくれない!」という不信感につながる場合があります。
人は、考える素材(経験・知識・視野視点など)があって『自分なりに考えられる』ので、ただ「自分で考えてみて」と言われても難しく感じてしまうこともあるようです。
新人の辞める理由になる場合がある。
自分なりに考えて仕事を進めることが得意な人と苦手な人がいます。
得意な人には効く指導法も、苦手な人にとっては苦痛に感じてしまう可能性があります。
逆に、それは苦手だけれど『指示に忠実に従うことが得意な人』は、その得意を伸ばしてあげたらいいと思います。
学校教育のように得意なことも不得意なことも、みんな一緒に満遍なくという教育は、仕事では成果に繋がりにくい発想です。
また、指示通りに、自分で考えて進めた結果、指示を出した人から「それは違う!」「こうしてほしい。」などと言われてしまう場合もあります。
すると「じゃぁ、最初から教えてよ。」と思うでしょう。
『守破離』ではないですが、やはりある程度のインプットと経験、そして組織風土に馴染む時間が「自分で考えてみて」を投げかける時には必要なのだと私は感じています。
そして、ある程度のインプットと経験、風土に馴染む時間は、人によって違います。
もう3ヶ月経ったから良いだろう、ではなく。一人一人の能力や性格に合わせて関わることが、リーダー・教育係に不可欠です。
私は多くの社員を面談していますが『辞めたい』という社員の理由で一番多いのが『人間関係』です。
その中でも、新人の辞めたい理由に『仕事を教えてくれない。』という声を聞くことがとても多いです。
リーダーや教育担当者は、一生懸命に考え、意図を持って取り組んでいるのにも関わらず『仕事を教えてくれない。』と辞められては、本当に切ないですよね。
そうならないために『意図』を活かすためのヒントになれば幸いです。
まとめ
『自分で考える人材に育ってほしい!』『仕事をする中で、創意工夫する楽しさを知って欲しい!』『ちゃんと理解し身につけてほしい!』などの意図を持って、新人を教育することは素晴らしいことだと思うし、リーダー・新人・組織にとってプラスになるかと思います。
その際に、気をつけるべきことは、2つです。
①基本はしっかりと教えること。基本なくしてアイデアは出ません。出たとしても的外れなアイデアになりがちです。
②教える相手の能力や性格を見極めて、相手にあった関わり方・教育をすることが大切です。
とは言え、
実は、コミュニケーションが取れていて、関係性が構築されていれば、やり方が違っていても、多少ストレスを感じても、それほど問題ないと思います。
また、新人が、なんでもすぐに聞いてきて仕事にならないから「自分で考えてみて」って言ってしまう、などという場合もあるかもしれません。
そのような場合は、基本的なこと(誰がやっても同じようにするべきこと)の最初の教育が不十分か、新人の理解度が低いか、です。どこに問題があるか見極めて改善することで『なんでもすぐに聞いてきて仕事にならない』などの課題は改善できます。
この例のような『こうだから、こうした』という場当たり的な教育は、教育としても、関係性を構築するという意味でも『悪循環の元』になりますので気をつけましょう。
一番大切なのは『関係性』です。さらに、上記でまとめた、気をつけるべき2点のことに気をつければ「自分で考えてみて」という『意図』が活きてくると私は感じています。さて、あなたの組織ではいかがでしょうか?