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深山 敏郎

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第17回 シェイクスピアの登場人物のレジリエンス(5)真夏の夜の夢

2021/10/12

前回はシェイクスピア作品「ロミオとジュリエット」の「ジュリエット」について、私なりに分析してきました。

今回はレジリエンス応用編の第五弾として、シェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」の主要登場人物の一人、アテネの大公「シーシアス」のレジリエンスについて検討してみます。

「真夏の夜の夢」は、妖精、王侯貴族、そして庶民中の庶民の世界を描く

「真夏の夜の夢」は、シェイクスピア喜劇時代の先駆けとして書かれた作品で。
彼のロマンス喜劇の代表作といわれています。
また、現代でも上演回数が多く、想像力をかきたてる幻想的な作品です。
もう半世紀近く前に英国王立シェイクスピア劇団(RSC: Royal Shakespeare Company)の有名な演出家ピーター・ブルック演出による作品が世界ツアーを行って、その後上演された世界中の「真夏の夜の夢」の演出に多くの影響を与えました。
また、この戯曲はオペラ、音楽、バレエなどにもなっています。

この作品は、創作年代に関しては諸説あるものの、貴族の結婚式で初めて演じられたという説が有力であり、縁起の良い作品として知られています。

実はこのA Midsummer Night’s Dream「真夏の夜の夢」という題名の翻訳をめぐっても諸説あって、Midsummerというのは夏至のことであって、6月の21~23日前後ということになっています。
ですから、近年では「真夏」ではなく「夏」と表記する作品が多いと思われます。
私は昔から使われている「真夏」という表現を使っています。
ギリシャのアテネでの出来事でもあり、日本とは季節感が異なっていると思われるからです。

「真夏の夜の夢」のストーリー

この作品の舞台は、アテネの大公シーシアスの宮殿で始まります。
シーシアス自身、結婚を4日後に控えています。
そこにアテネの老人イージアスが美人の娘ハーミアを連れて相談に訪れます。
娘が親の決めた男との結婚を拒み、他の男と結婚したいといって困っているということです。
そこでアテネの法律に照らして、親に従うようシーシアス大公がその娘をいさめますが、いうことを聞き入れようとしません。困った大公は自分の結婚式まで返事を待つことにします。
ハーミアと恋人ライサンダーはアテネから逃亡しようと試みます。
そこでハーミアを追う親の決めた男、そして彼を追いかけるヘレナと4人が逃亡と追走劇を繰り広げます。
疲れてアテネ近郊の森で眠りこけてしまう4人組に奇妙なことが起こります。
妖精の王オーベロンが手下のパックに言いつけて、惚れ薬を使って円満になるように画策するのですが、その薬を誤って使ってしまい、追い求める側と追われる側の逆転が起こり、ドタバタ劇が始まります。
そこに大公シーシアスの婚礼で劇を披露しようとする職人たちの騒動も加わり、観客は大笑いの連続。

こうしたことを経て、大公シーシアスはすべてを許し、ことを丸く収めます。

シーシアスのレジリエンス

今回も以下の代表的なレジリエンス要素を用いて分析をします。
1.自己効力感
2.感情のコントロール
3.思い込みへの気づき
4.楽観
5.新しいことへのチャレンジ

以下、あくまでも筆者なりの分析であって、他の視点からも分析してみるのも面白いでしょう。

自己効力感は非常に高いと考えられます。
なぜならば、自分の立場をしっかりと理解し、身分制度の厳しい時代にあって、弱い者へのいたわりの気持ちが強く感じられます。
また、自己の判断基準に偏りはなく、法律を遵守しようという気持ちと弱者への思いやりのバランスも絶妙です。

感情のコントロールは、非常に得意であると言えるでしょう。
自らの感情は高ぶることなく、困難な状況にも全体のバランスを考え、最善を探ろうとしています。
また、相手との対話を重んずる傾向が強く見受けられます。

思い込みへの気づきという面でも、ある程度以上高いといえるでしょう。
法律に従って判断をするということを崩すことはないのですが、恋人たちの状況が変化した時に、つまりハーミアの父イージアスに認められた結婚相手が、元々の恋人であるヘレナへの思いを強くして、ハーミアをあきらめた時に、トータルを考えてすべてが丸く収まるように判断をします。

楽観という視点からは、この劇の中ではあまり証拠がありません。
悲観的ではないということは分かります。

新しいことへのチャレンジという視点では、チャレンジかどうか分かりませんが、状況変化に対応して新しい判断をしようという柔軟性は備えているようです。
ただし、自ら新しいことを追い求めるという態度は見せません。

次回はシェイクスピア喜劇として有名な「空騒ぎ」の登場人物について分析してみましょう。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

また、シェイクスピアに関するビジネス活用のご参考として、拙著:「できるリーダーはなぜ「リア王」にハマるのか」(青春出版)があります。
この書籍はシェイクスピア作品を通してビジネスの現場にどう活かしていくかを検討するために書かれました。

toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
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