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第265回 自治体DXの現在地と「書かない窓口」〜システム変革を支える住民の巻き込みとリテラシー教育〜

2026/04/02

先日、日本経済新聞に「自治体DXで業務効率化『書かない窓口、AI活用を』総務省・村上氏」という記事が掲載されました 。
総務省の村上仰志氏へのインタビューで、人口減少に伴うマンパワー不足を見据え、書類記入の手間を省く「書かない窓口」やAIの活用を後押しする方針が示されています 。
弊社では自治体職員の人材育成に携わる機会が多いため、この記事にはどうしても関心が向きます。

数年前と比較すると、自治体のDXは総体的に進展しているようです。
特に、目指すべきゴールの一つとして挙げられている「書かない窓口」というコンセプトは非常にイメージしやすいものです 
役所の手続きと言えば「とにかく書類を書かなくてはならない」という印象が強いですが、これが撤廃されるだけでも住民の利便性は飛躍的に向上するでしょう。
一方で、私の体感としては、DX化の恩恵が行き届いているのはまだ「一部の部門」にとどまり、全体的にはこれからという印象も受けます。
記事でも利用状況のばらつきが指摘されており、オンライン申請の利用率が図書の貸し出しで75%、地方税の手続き(eLTAX)で73%と高い一方で、児童手当等の認定請求は0.8%、要介護認定の申請は0.1%にとどまっているそうです 。
これはシステム自体の使い勝手の問題なのか、それとも制度の複雑さや対象者のITリテラシーが要因なのか。
この分析にこそ、次のステップへ進むヒントが隠されている気がします。

また、自治体の規模ごとに人口20万人、5万人、1万人の3つのモデルを作ったというアプローチは、初期投資にかけられるコスト面を考慮すると現実的だと感じました 。
とはいえ、行政サービスには全国どこでも等しく受けられるべき「共通項目」があるはずです。
自治体の規模や財政力によってできることに差が生まれれば、それが更なる地域格差を生むことになりかねません。むしろ、リソースが限られている地方や小規模な自治体にこそ、便利なデジタル環境が強く求められているはずです。
市町村における生成AIの導入が半数程度にとどまっているというのも興味深い結果です 。
人材がいないことや導入効果が不明といった点が要因のようですが 、徐々に解消されることを期待したいです。

今回の記事は主に「行政側の職員や組織」にフォーカスして書かれていましたが、人事教育コンサルタントの立場として、同じくらい重要だと感じているのが「住民への利用啓蒙や巻き込み、そして使い方教育」です。
以前お話を伺った鹿児島県の日置市などでは、高齢者にスマホで手続きをしてもらうためのサポートを推進し、高いDX浸透率を実現していると聞きました。
首長や幹部の本気のビジョンがあり、それに呼応して現場の職員が地道な啓蒙活動を頑張っているようです。
市区町村の職員は自身もその地域に住む住民であり、身近に高齢の家族を持っているケースも多いからこそ、「身内の困りごと」として啓蒙しやすいという地方ならではの強みもあるのでしょう。

自治体であれ民間企業であれ、組織のDXを推進するためには、一部のIT専門家だけでなく、一定のリテラシーを持った人材を数多く育てることが不可欠です。
総務省も、自ら高度なプログラミングができる人材ではなく、基礎的なITリテラシーを持って庁内調整ができる「DX推進リーダー」の育成に力を入れているそうです。
「この業務をオンラインでどう変えられるか」を主体的に考えられるマインドセットの育成が求められています。
弊社としても、自治体の職員教育の中に様々な形でDX推進の視点を採り入れる構想を持っています。
近年はマネジメント研修などのケーススタディやロールプレイにも、そうした要素を意図的にまぶしてきました。
専門スキルの付与は弊社の領域ではありませんが、一定のリテラシーをベースに「仕事の進め方をどう変えていくか」を対話を通じて考えさせることは、まさに私たちの最も得意とする分野です。
我々自身がその視点に立ち続けられるよう、自治体業務が抱えるリアルな課題への研究や考察をさらに深めていきたいと感じる今日この頃です。

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