第234回 自走するチームは、能力より○○で決まる
2025/11/17
「どうしてあの部下は変わらないんだろう?」
「何度言っても同じミスをする」
「もっと主体的に動いてほしい」
こんな相談を受けるたびに、私はある確信を思い出します。
300社以上の組織を見てきて、例外なく共通していたこと。
それは…
成果を止めているのは能力不足ではなく、『関係のこじれ』である、ということ。
どれだけ優秀な人材を集めても、どれだけ仕組みを整えても、信頼が揺らぎ、関係がギクシャクした瞬間、組織はピタッと止まる。
実は、止まる理由は「人」ではありません。
『関係の質』なのです。
私はその渦中に長くいました。
昔の私は、心の中でいつもこうつぶやいていました。
「どうして分かってくれないの?」
「私はこんなに頑張っているのに!」
DV元夫、厳しい両親、仕事の関係者…
うまくいかない相手ほど、「相手を変えなきゃ」と強く思っていました。
しかし当然ながら、相手は変わりません。
むしろ、関係はさらにこじれていきました。
今なら分かります。
『相手を変える』という意識そのものが、関係を壊していた。
でも、そんな日々に中で、1つだけうまくいっていた関係がありました。
それは、我が子との関係でした。
子どもに対してだけは、私は自然にこう接していました。
・コントロールしない
・感情をそのまま尊重する
・対等に向き合い、対話を深める
完全に「信頼ベース」で関わっていたのです!
一緒に大笑いしたり、深い対話を重ねたり、本音でぶつかることも多かった。
そのとき私は気づきました。
「子どもにはできていたのに、大人にはできていなかった!」と。
なぜか?
答えはシンプルでした。
子どもには「成果」を求めていなかった。
でも大人には「期待」を乗せていた。
この『期待』が、知らないうちにコントロールへ変わる。
そして、コントロールされた人は必ず動かなくなる。
逆に、尊重された人は『自走』し始める。
そんな小さな気づきから、300社以上の企業に入って、さらに大きな気づきが…。
例えば、
リーダーがハマる『変えよう病』
真面目で責任感のあるリーダーほど、「何とかしてあげたい」と思う。
そして、つい相手を変えようと関わってしまう。
でも、それが「指導のつもりが、支配になっていた」なんてことも多いのです。
たとえば、
「もっとこうしたら?」「なんでやらないの?」という言葉の奥には、相手を自分の思い通りにしたいという無意識が潜んでいます。
この状態では、相手の心は閉じます。
つまり、『変えよう』とした瞬間に、関係は動かなくなるのです。
ある中堅リーダーの話です。
入社3年目の部下が、何度言っても報連相をしない。
「また勝手に判断して失敗してる!」と、つい感情的に叱ってしまう。
「どうして報告しないんだ!」「何回言えばわかる!」その繰り返し。
部下も次第に萎縮し、さらに報告を避けるようになっていきました。
そんなとき、リーダーは気づいたのです。
「もしかして、俺の言い方が怖いのかもしれない」。
そこで、次の報告のとき、関わり方を変えてみました。
「失敗してもいいから、まずは早めに教えてほしい。一緒に考えたいんだ。」
たった一言でした。
その瞬間、部下の表情がふっと緩んだ。
次の日から、少しずつ報告が増え、相談も増え、いつの間にか、自分から動くようになっていたのです。
リーダーが変えたのは、表面的には、『言葉のトーン』と『関わり方』だけ。
そして、部下に対する気持ちの変化もありました。
「リーダーの自分だけが正しいわけじゃない、一緒に成果を生み出したい!」というふうに。
でも、それによって関係が変わり、行動が変わった。
この順番が大切なのです。
関係を変えれば、行動は自然に変わる
関係性とは、相手をどう見ているか、ということ。
「どうせできないやつ」ではなく「できるようになりたい人」と見れば、かける言葉も、接し方も、全く違ってきます。
つまり、こちらの『見方と関わり方』を変えれば、相手の行動は自然に変わっていく。
たとえば、「なんでできないの?」ではなく、「どうしたらできると思う?」と聴く。
「報連相が足りない」と責めるのではなく、「どうしたら話しやすい環境になるかな?」と一緒に考える。
その瞬間、上下の関係から、協働関係に変わります。
この変化こそが、組織を自走させる第一歩です。
結局のところ、人はコントロールできないけれど、関係性はいつでも変えられます。
相手を変える努力より、「どう関わればこの人の力が引き出せるか?」
そこに知恵と情熱を注ぐリーダーこそ、チームを自走させるリーダーです。
相手を動かそうとするより、関係を動かすほうが、ずっと早くて気持ちがいい。
ただ、私たちはその習慣がないだけ。
だからつい、人を『変えよう病』にかかってしまうのです。
今日からは、人を変えるのではなく、『関係を変える』。
そのほうが早く、楽で、そして確実にうまくいきます。
そんな習慣を、あなたのチームにも育てていきましょう!
結論:変えるべきは「相手」ではなく「関係」
人は、コントロールされると『やらされ感』
尊重されると『自ら動く』
これは理論ではありません。
現場で何度も検証してきた真理です。
だからこそ自走組織づくりは、制度や仕組みの前に「関係の修復」が欠かせない。
今、あなたが変えようとしている相手は誰ですか?
その相手を変えようとする代わりに、今日一日だけでいい。
関係の質にフォーカスしてみてください。
たったそれだけで、人は驚くほど柔らかく、前に進み始めます。
尊重は、自走を生む。
これが、私が現場で掴んだ確かな答えです。
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