「まちおか」を運営する「みのや」が、創業71年目にして「東京証券取引所・スタンダード市場」への上場を果たしました。
1997年に東京都板橋区で「まちのお菓子屋さん」としてスタートした当初は、「セブン-イレブン」がすでに商標登録していたこともあり、ほどなくして「おかしのまちおか」へと改称。
意外と知られていないこのエピソードに、下町らしいたくましさを感じます。
以来、身近で手に取りやすい「菓子専門店」として地域に根を張り、今では関東・中京・関西エリアを中心に約200店舗を展開しています。
そんな同社ですが、2024年6月期に売上高225億円、営業利益約9.7億円という成果を挙げ、直近3年間で売上は30%増、利益は実に5倍と急成長しており、「お菓子チェーン」として異例の「独り勝ち」と言われるのも納得です。
好調の要因は、徹底したディスカウント戦略、緻密な出店攻勢、そして収益構造の多様化にあるようです。
「メーカー品の定番菓子」を安定して提供する一方で、旧規格品や処分品を「スポット商品」として大量に仕入れ、低価格で差別化。
その結果、来店客は「いつ来ても安い」「何か面白いものがある」という「安定感と発見」の楽しさを同時に味わうことができるのです。
加えて、ロードサイドと駅前・商業施設を組み合わせた「被せ出店」戦略も特徴的。
一等地を避け、実需に応える店舗配置によって安定した集客を実現しています。
さらに、複数の物流センターを活用したスピード納品と、自社倉庫を軸にした店舗供給体制は、競合が簡単には真似できない強みとなっています。
もうひとつ注目したいのが、「多様な働き方実践企業(プラチナ認定)」としての取り組みです。
埼玉県(本社所在地)の制度に基づき、短時間勤務など柔軟な制度を整備。
女性や子育て世代を含む幅広い人材が活躍できる環境づくりを進めており、店舗拡大や人材確保においてもアドバンテージとなっています。
「おかしのまちおか」は、お菓子の価格と売り場体験の設計を巧みに組み合わせ、価格競争に巻き込まれることなく、「ディスカウント×専門性」という独自のポジションを築いたと言えるでしょう。
そこに「働きやすさ」という要素も加わり、まさに「強くて優しい」成長モデルが形になってきています。
上場を機にさらなる出店加速と、地域性や労働環境を軸とした「人手不足時代の勝ち筋」として、今後の展開も注目したいですね。