第9回 部下を育てられないリーダーをどう育てる?
2021/06/13
プレーヤーとして活躍できることと、人を育てることは、全く別の能力です。
そして『リーダーが部下を育てることが苦手ゆえに、関係が悪化し、組織として成長しづらい。』という課題は小さな組織では起こりがちです。
小さな組織で、プレーヤーとして活躍した人とは、上から教わってできるようになったわけではなく、言うなれば『一人屋台』タイプが多いからです。
自分自身が、自分の感性と努力で実績をあげてきた一人屋台の人に、急に部下がついて「育てなさい。」と言っても。
元々、人を育成するのが得意だったり、好きな人でない限り難しいこと。
なぜなら、自分が誰かにしてもらったことを土台に、自分らしさを加えて実行することは比較的誰でもできるかと思いますが。
一人でやってきた人は、その『自分流』を、部下のためを想って、一生懸命に『良かれと思って』伝えてしまうから。
たまたま、その『自分流』がピッタリ合う部下なら育成が機能しますが、残念ながら、なかなか合わないのが現実です。
だから、リーダーも部下も、強いストレスを抱えてしまう。私はそんな小さな組織と、この10年、たくさん関わってきました。
リーダーも部下のために一生懸命。部下も期待に応えようと一生懸命。
その結果、人間関係がギクシャクする。それはとても悲しいことだと私は感じます。
だから、その悲しいすれ違いを解決することに大きな喜びを感じています。
実例はたくさんありますが、そのうちの一つをご紹介します。
部下のストレスが爆発?
「活躍したい!」と営業職として入社した3人の部下たち。
営業実績に対しては尊敬できるリーダーに対して、
・指示命令が曖昧。
・言うことが変わる。
・リーダーと同じようにはできない。
・もっと具体的に教えて欲しい。
・結局何をしたらいいのかわからない。
などと戸惑い、ストレスを感じています。
リーダー自身は、指示命令もしているし、部下のためを思い、一生懸命に教えているつもりです。
私は、個人面談で一人一人の話を聞いた後、全員で会議をしました。
最初にポストイットに『リーダーとは?』と言うお題で全員に書いてもらいました。
すると、全員が見事に『リーダー』と言う単語の概念が違ったのです。
同じ『リーダー』と言う単語でも、一人一人使っている意味がこんなにも違う!
と実感していただきました。
この実感も大切です。
言葉の概念や背景が違うと実感できないと、話し合いが平行線になりかねないからです。
そして『一人一人、こんなに違う期待の全部を、リーダーが応えるのは難しい。』という共通認識をしていただきました。
それから『自分たちにとってのリーダーとは?』と言葉を定義する過程で、リーダーの得意不得意を出してもらい、得意を生かすために、不得意は、それが得意な部下が補うことにしました。
すると、部下たちは『自分たちの出番だ!』とばかりに、役割を明確にしていきました。
元々、やる気のある部下たちですから(やる気があるからこそのストレスだったので。)、自分たちの出番(役割)が明確になることに、やりがいを感じてくれたようです。
「リーダーなんだから、ちゃんと指示くらいしてよ。」など、こうしてあーして!と言うストレスが、ほとんどなくなり、お互いの得意を持ち寄り、協力し合うチームになりました。
この例はほんの一例ですが、他のどの事例でも基本は『ありのままを受容し合う関係を構築する。』と言うことに尽きます。
ちなみに、やる気がないなどの問題社員を育成する時も、この基本は変わりません。
ありのままを受容し続けていると、今まで言語化できなかった本当の『理由』を言語化でき、そこに本人自ら気づくことで変化していくからです。
成果につながる人材育成の形とは
このように『問題そのものにフォーカスして、正しい形に教育する。』のではなく、それぞれにとって一番いい状況を明確にして、それぞれの強みを活かすことで、どうしたらその状況になるのか?を考えること。
それを、誰かが考えてやらせるのではなく、当事者たちがみんなでアイデアを出し合う、そのプロセスが大事です。自分自身が言語化したことは、やりがいを感じて実行するからです。
今までの日本の教育は『苦手を克服する』『理想形に当てはめる』という考え方が強いのですが。
成果を最大限にするという視点から見れば、一人一人の強みにフォーカスして活かし合い、相乗効果を生む方がずっと、それぞれがやりがいを感じながら成果につながります。
教育、という概念から見直す時代に、もうとっくに突入しているのだと私は日々、実感しています。