HACHIDORI NO HANE(ハチドリのはね)HPトップ

益田 和久

ホーム > 益田 和久 > 記事一覧 > 第133回 DXの目指すもの

第133回 DXの目指すもの

2023/09/21

鉄道会社さんの本格的な社内DX化に向けた、社員教育プロジェクトに参加させていただくことになりました。
ありがたいお話です。
DXの専門家ではありませんが、週1回のWebマガジンを通して、オンライン(デジタル)との向き合い方を発信し続けていたことが今回のお仕事に繋がったことは間違いないと思います。
先日第1回目のお打ち合わせがありまして、主催者様より今回のプロジェクトおよび教育のねらいについて、丁寧にレクチャーしていただきました。
そこで改めて感じたことは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味や具体的な業務展開を理解できている人は、意外に少ないのではないかということです。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の「トランスフォーメーション」とは、英語で「変化・変形・変容」という意味です。
つまりは「デジタル化により社会や生活の形・スタイルが変わること」です。
この「変わること」とはどんなことなのか。
経済産業省の定義では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」となっています。

デジタル化によってトランスフォーメーション(変革)させるのは、製品、サービス、ビジネスモデルという「企業の売り物」だけでなく、業務、組織、プロセス、企業文化や風土という「企業の組織形態や活動状態」も含まれます。
目指すゴールは「競争上の優位性」であり、それは「他の企業よりも生産性の高い、仕組みをつくること」になります。

このコラムでも以前書いたのですが、DX化とIT化を混同している人は多いと思います。(私も少し前までそうでした)
両者に明確な線引きはないのですが、あえて線引きをするならば「目的」が違うと思います。
IT化の主な目的は、業務の効率化です。
ひと昔前まで、企業の会計処理は専用の台帳に数字を記入し電卓で計算するのが通常でした。
ところが今は、Excelでの表計算や会計ソフトウェア等で処理しているのがほとんどです。
結果として経理業務が短時間で済むようになっているのが、IT化による業務の効率化です。
業務の基本的な進め方は変わっていないけれど、IT(情報技術)によって業務の大幅な効率化、生産性向上が実現し、企業にとっては大きなメリットをもたらしています。

一方、DXの「X」はトランスフォーメーション(変革)なので、業務が「変革」していることが求められます。
先述した会計処理ですと、会計ソフトのデータを、顧客管理や原価管理に反映させるような業務フローをつくり、組織の「変革」につなげることも一つです。
それを進化させて、会計処理の一定のルールやパターンを仕組み化(自動化)し、人員削減を図ることこそがDXの目指すところであります。

打ち合わせで、「鉄道会社がこれまで実現したDXはSuicaだけ」というお話がありました。
とても新鮮に感じました。確かに究極的に考えるとそうかもしれません。
ただそこに至るまで、様々なIT化やリテラシーの強化、デジタル戦略の理解促進という地道な啓蒙活動があるわけです。
日常業務における発想、思考、行動を少しずつでもデジタル化していくことで、変革の素養ができていくのだと思います。

今回、私自身がDX教育にどのように貢献できるのかを体系的に考えることができる絶好の機会です。
ゼロベースなスタンスで参加者に向き合い、どれだけ「目からウロコ」の発想を引き出せるか、研修開発の過程が楽しみになってきた今日この頃です。