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深山 敏郎

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第106回 困ったときの老荘だのみ エピソード⑥「母なるもの」

2023/06/27

前回このコラムの105回目では、老子の言葉「無限の創造力」を取り上げました。

「母なるもの」

老子は言います。
「うつろなものは、無限の創造力を持つ。谷を見なさい。谷は『母なるもの』です。
母なるものの門、それが天地の根源です。
永遠に滅びることがなく、生めども生めども疲れを知らない」と。

古代人の目には、谷は神秘的な創造力の根源と映ったようです。
大地の裂け目である谷からは水が湧き、雲が起こり、草木が生まれ、鳥獣が集まります。
また谷は、女性を象徴するものとして、古代生殖信仰の対象でもありました。

ビジネスにおいて、草木を咲かせる「土壌」になれるか

この世の中には何か他を活かすものがあります。
例えば花を咲かせる草木には土が必要であり、土を豊かにするには微生物や太陽光、水の力が必要です。
このように考えると、ビジネスにおいても他を活かす土壌になる覚悟があるかどうかが大切です。

志の高い人は、一様にこの「土壌」になり切る覚悟があります。
裏返してみると、この覚悟なくしては真に働いているとは言えないのです。

「はたらく」の意味

「はたらく」という言葉の意味を、ビジネス上の恩師F氏から教えていただいたことがあります。
「自分のためだけに働くのは本当の『はたらく』にはならない。
それは『じぶらく』である。『はた』、つまり他者を楽にするから『はたらく』なのだ」と。
まるで語呂合わせのようにも思えるかもしれませんが、私たちが働く本質を表している言葉ではないでしょうか。

老子のいう「母なるもの」とはこのように他人のために尽くすことに集中しているため、小さな我を主張しません。
我を主張しないからこそ多くを生み出すことができるのです。

何のために働くのか

経営者や管理者、そして従業員は、いったい何のために働いているのでしょうか。
ここまでお読みいただいた方は、「他人を楽にするため」と即答されるでしょう。
もしそこでビジネスによって他者の幸せ、つまり「楽」を生み出すことが出来れば、働く目的を果たしているといえるのではないでしょうか。

顧客を喜ばせ、取引企業に利益を与え、従業員が生計を立てるとともに将来の望ましい姿を描くことができる、また地域社会や地球の裏側で暮らす人たちの生活を侵害しない、そうしたことはすべて真の働き方といって良いのではないでしょうか。

スイス発の国際企業ネスレは、データマイニング(多くのデータから重要なデータを掘り起こすこと)において、あるユーザーがリュウマチでふたの開け閉めが困難であるというたった一つの投稿から、現在の開け閉めが楽なインスタント・コーヒーのふたを考案しました。
その結果、多くの方にとって楽になりました。

「はたらく」に自分は含まれないのか
では「はたらく」には、他者だけを楽にすることなのでしょうか。
谷が常に天地の根源であるためには、雨が必要です。
また、そこに集う動植物も必要です。
つまり、相互に恩恵を受けているのです。

欧米の考え方では、Win-Winの関係であり、Give & Takeの考え方です。
Give & Takeは誤解されることも多いのですが、本来の意味は「何かを得ようと思えば、自らまず与えなければならない」ということです。
日本でも「おかげさま」といった言葉が他者への感謝を表し、「お互い様です」といった応答があります。
ビジネスの本質を見極めて他者の「楽」がめぐりめぐって自らにも還流できるのですね。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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