日立製作所が、新人のデータサイエンティストを製造現場に一定期間派遣して、現場に即した問題解決スキルの啓発、強化に取り組んでいます。
データサイエンティストとは、ビッグデータを分析し、事業に役立つ知見を導き出すプロフェッショナルです。
プログラミング言語や統計ソフトを使いこなすだけでなく、分析結果をアプリ開発やサービスに役割も担います。
多くの企業がデータの蓄積や分析をして、経営戦略やサービス改善に反映させる「DX経営」に注力していくなか、データサイエンティストの需要は着実に高まっています。
そのような状況下で、新人データサイエンティストを製造現場に派遣する背景というのがとても興味深いものでした。
工場のベテラン社員と現場にいながら直接議論をすることで、「机上の空論」にならないような課題解決の手法を考察することを視野にいれているようです。
新人技術者に現場をよく知ってもらい現実的な成長実感をする場をつくるだけでなく、現場の方々に「DX経営」へのマインドチェンジを促す効果もあるようですね。
実際にこの現場派遣制度を導入する前までは、データサイエンティストが開発したツールが現場従業員にダメ出しをされたり、データサイエンティストが導き出した論説を拒否したこともあったようです。
操作しづらい、現場の肌感覚とずれている。
人工知能分析の根拠が見えない等、理由は様々ですが共通して言えるのは「データ分析と現場の乖離感」。
現場からすると、どこまでこちらのことを理解しているのかという思いと、現場の真のニーズをくみ上げてほしいという思いは常に交錯しています。
ところが、この派遣制度を導入してからというもの、現場を経験をしたデータサイエンティストたちからは「データ分析の背後にあるものが見えてきた」という自信に満ちた発言が聞かれるようになったそうです。
派遣先の現場でも、データサイエンティストの実質的貢献に対しての期待が着実に高まっています。
私も、営業や人事のツールやシステムの開発に携わってきましたが、完成して導入した後にこの「制作側と現場の乖離感」は何度も経験してきました。
現場ともコミュニケーションをとりながら進めているつもりではありますが、細かな意見や要望が吸い上げられていないのが実情です。
その場にいないと、顔をつきあわせないと、一緒に作業をしてみないと吸い上げられない情報があるということが、今回の事例を通して再確認しました。
とはいえ、全ての会社、業種で現場に人を派遣して協働作業をすることができるわけではありません。
だからこそ、現場にシステムやツール、データを提案する側は、自ら足を運ぶ、自分の目で確かめる、実際の場面でやってみるということは、意識して取り組む必要がありますね。
私たち研修会社も、自分たちの発案や情報だけでコンテンツ開発をやってしまいがちです。
せっかく開発するからこそ、研修対象者である現場の人たちの話を良く聞くことを、改めて強化していきたいと思う今日この頃です。