第72回 人を動かす!コミュニケーションの大原則
2022/09/05
人を気持ちよく動かす!という場合でも、また関係性を構築する場合でも、どんな時でも大事な『コミュニケーション5大原則』について、第70回の記事で解説しました。
この5大原則は、
例えば、主語を自分にして話す、などの自分自身の心がけで大きく改善できるものです。
しかし、5番目の『感情を大切にする』というところは、心がけだけでは難しいのです。
そして、この『感情を大切にする』ということが、人を気持ちよく動かす!の大原則だと思うので、今日は、そこを詳しく解説します。
『人を気持ちよく動かす!』とは?
トップダウンで指示命令して「仕事だからやるのが当たり前!言うことを聞け!」と言うコミュニケーションは、昭和な時代では機能していましたが(私自身、現在55歳ですから、ガッツリ昭和世代です・笑)、今は通用しません。
現代は、情報も多く、多様な価値観も尊重され、そして何よりも『明確な正しい答えのない不安的な時代』だからです。
仕事だからやれ!のような『人をコントロールして動かす方法』では成果が出づらいのです。
では、どうしたらいいのでしょうか?
褒める叱るなどの概念も必要ありません!
『人が気持ちよく動いて成果が出る』とっておきの、でも実は『シンプルな方法』があります。
それが、感情を大切にするコミュニケーションです。
『感情を大切にする』とは?
人は理論ではなく感情で動く、と言うことは誰でも知っていますよね?
でも、コミュニケーションの中で感情は非常におざなりです(笑)
例えば、
怒ってはいけない!と感情を抑えたり、もやっと小さな違和感を覚えても、誤魔化したり・・・。
無意識ですが、多くの場合、感情を大切にできていないのです。
感情を大切にするコミュニケーションを誰もしていないので、その概念もやり方も『誰も知らない』私たちなのです。
だから、怒りなどの感情を『マネジメントするかコントロールする』と言う方法が主流の社会。
でも、それだと根本解決できないし、能動的に人を動かすこともできません。
では、どうしたらいいのでしょう?
感情を大切にするってどうやるの?
はい!
まずは、ご自身の感情を大切にする、と言う実践からです。自分の感情を大切に扱い、無意識レベルの自分の奥にある『想い』を言語化する。自分の想いを言語化できた深さだけ、人の感情も大切にできます。
まずは自分から・・・それは、
『自分を尊重した分だけ、人のことも尊重できるから』です。
例えば、
ムカッ!と怒りの感情を覚えたときに、多くの人は
「あぁ、ムカつく!」と怒りを感じても、それを・・
①「怒ってはいけない!冷静になろう。」と感情を抑える。
②怒りのまま、相手にぶつけてしまい、関係を拗らせてしまう。
③心にシャッターを下ろして『ことなかれ』に徹する。
④呑みながら友達に愚痴ったりして発散する。
⑤相手に嫌味を言って、なんとか気持ちの整合性を保つ。
時と場合によりますが、大抵は、こんな感じのことに収まるのではないでしょうか?
この①〜⑤は、どれも感情を大切にできていない行動なんです。
ムカッと感じたら、まずやるべきは・・・
「あぁ、今、私はムカついている!」とありのままの自分を受け入れると言うことです。
「あぁ、今、私はムカついている!」と受け入れている状態は、怒りを感じつつ、怒りの外にも出ている状態です。客観視できているんです。
だから、まずは存分に怒りの感情を感じ、その感情をありのまま受け入れる!
この第一段階が『難しく感じる』人が多いようです。
それは、そんな習慣がないからです。
そう、習慣がないというだけのことなので、意識してやってみると、すぐに・・・まるで自転車に乗れなかったのに、乗れるようになったら、もう意識しないで乗っている。くらい朝飯前になるでしょう!
これができたら・・・
もし、その時に仕事中で目の前に急いで片付けないといけない問題が山積みだたら・・・「よし、この怒りの感情は家に帰ってお風呂上がりに掘り下げてみよう」と一旦棚に上げます。
もし、しっかり怒りを受け入れていなかったら、この棚にあげるのも難しんです。
怒っちゃいけない。冷静にならないと・・・なんて思いながら、でも怒っているから大変なことに!
しっかりと「相当ムカついてるよ。私」と受け入れることができれば、棚にあげて仕事に集中できます。
もし、その時に時間的余裕があれば、その場で掘り下げる。
時間的余裕がなければ一旦、棚にあげて、目の前のことに集中し、後で掘り下げる。
いづれにしても「ありのまま受け入れる」ができれば簡単です。
感情を掘り下げるってどうやるの?
しっかり感情を味わい、受け入れられたら、
「どうして、こんなムカついたのだろう?」と自分に質問します。
すると「あの人があんな言い方したから」など、怒りの『きっかけ』が明確になりますね?
ここを「怒りを感じた理由」と捉えている人が多いのですが、これは理由ではなく、単なるキッカケです。
全く同じ状況でも怒りを感じる人と感じない人がいます。
だから、相手は関係なく『自分の心の中にあるスイッチが押されたきっかけ』に過ぎないのです。
きっかけが明確になったら・・・
「どうして、そのきっかけに心が反応したんだろう?その時に、本当はどうして欲しかったのかな?何を自分は望んでいたのかな?」
などと自分に問いを立てて掘り下げていきましょう!
そもそも、怒りと言う感情は『自分が本当に大切にしている【想いや価値観】をないがしろにされた時に感じる』ことが多いんです。
怒りの元は悲しみだと聞いたことがあるでしょう?
その怒りの元まで掘り下げずに、表面上の感情だけをなんとかしようとしている現代なんです。
そして、お互いに傷つけあったり誤解しあったりしている・・・
でも、感情から紐解いて、感情を丁寧に扱えば、今までは無意識で、言語化できなかった、大切な想いや価値観を言語化することができます。まず自分理解が深まるんです。
それを伝え合うことで「自分とは違うけれど、そうなんだね!」とか「言いたいことは同じだったね」など、傷つけあうことなく理解し合えます。
どんなにこじれてしまった対立も根本解決できます。感情を大切にすることは、実は難しいことでもなんでもなく、自分の(相手の)感情を丁寧に扱うだけ。
でも、そのやり方を誰も教わってないから難しく感じているだけ、なのです。
気持ちよく人を動かす!
さて、この感情を大切に扱うことが、なぜ『気持ちよく人を動かす』につながるのでしょうか?
それは、自分の感情も人の感情も大切に扱うことで、表面的ではない、自分や相手の『ニーズとウォンツ』が明確になるからです。
仕事だから・・・
上司命令だから・・・
ではなく、
自分理解し相手理解した上で『自分の想いに沿って、本人が行動を決断できる』からです。
それを多くの人は「そんなことしたら、それぞれが我儘になって、とんでもないことになる!」などと恐れを抱きます。
けれど、感情を大切にしたコミュニケーションを元に、ビジョンを明確にしすり合わせ、そのために何ができるか決断するという、対話の流れは『わがまま』とは対極です。
ゴールをすり合わせ、感情の奥にある想いや価値観を尊重し、行動を自分で決断することだから。
その対話の土台となるのが、どうしてもこの『感情を大切に扱う』と言う部分なんです。
人は理論で納得しても・・・動かないか、動いてもやらされ感。でも感情で納得したら能動的にいきいきと動き出します。
結果的に、気持ちよく人が動くのです。
ちなみに「勝手を言い出してわがままになる!」などと心配になるのは、感情を大切にできていないからです。
自分のその『心配という感情』を、丁寧に掘り下げてみましょう。
そう、まずは自分からです。
『感情を大切に扱うことで、自分も人も大切にし、尊重しあい、ともに成果を創造していく』そんな時代にもう突入していると私は感じています。
さて、あなたは、
『今までのコントロール型コミュニケーション』と『感情を大切に扱う対話型コミュニケーション』どちらを選びますか?