HACHIDORI NO HANE(ハチドリのはね)HPトップ

深山 敏郎

ホーム > 深山 敏郎 > 記事一覧 > 第62回 経営者のレジリエンス(12)経営者と家族の関係は難しい

第62回 経営者のレジリエンス(12)経営者と家族の関係は難しい

2022/08/23

前回は、経営者のレジリエンス(11)経営者の陥りやすい錯覚②でした。
「思考に由来する錯覚」というテーマで、10円玉を描いたり、両国国技館の住所を読んだりしました。
まだお読みになっていない方は、是非、一度読んでみてください。

今回は、「経営者と家族の関係は難しい」というテーマです。

経営者とは通例、起業家、事業承継者、雇われて経営を任されている人のすべてを含みますが、今回に限り雇われて経営を任されている方を除外して考えています。

経営者と家族の関係は本当に難しい?

経営者の皆様に、悩みをお尋ねすると、家族との関係という方が驚くほど多いのです。

ご夫婦の関係はあまり他人に伝えたがらないとしても、親との関係、子供との関係などが悩みの種という経営者の方々は多くいらっしゃいます。
因みにこれは経営者でなくともそういう悩みがあるということを予めお伝えしておきましょう。

自分の子供を後継者にしたいのは親心?

事業のオーナー経営者の皆様は、自分の子供を後継者にしたいということをよく仰しゃいます。
コンサルタントとして、会社の中でそのお子さんを後継者にして成功させるための方策を経営者といろいろと考えるのですが、お子さんはまったく興味を示さない、あるいは極端な例では、どこから見ても次の経営者としてのあらゆる準備が出来ていないということがあります。

はたして自分の子供を後継者にしたい、と考えるのは親心でしょうか。
ここでの親心とは子供はまだ有難味を理解していなくとも、将来きっと親に感謝するということを示唆しています。

しかし、親が「親心」という言葉を使う時は、親のエゴを子供に押し付けていることが多いのではないでしょうか。
子供には子供の都合があり、親の敷いたレールをそのまま走ることに抵抗がない人と、猛烈に反発する人がいると思います。

私の知り合いで、ある企業の後継者として期待されていた人がいました。
彼は親に相当反発をしていましたが、今は家業を継ぎ業務拡大をして成功しています。

歌舞伎役者など伝統芸能の名家に生まれた子供たちもいろいろな迷いや反発をした上で自分の人生を選んでいるようです。

筆者の実例もお示ししましょう。
私の父親は若い頃に公務員をしていました。法務省管轄の仕事でした。
私が中学校の時に工業高校へ進学したいと言ったら、相当落胆されました。
父は私に法曹関係の仕事についてもらいたかったようですが、私は一切興味を持ちませんでした。
結果として普通科の高校の後、大学では外国語学部へと進みました。
しかし、父親と、私の進路について真剣に話し合った時期があって、親も私も納得して進路を決めました。

経営者と子供の関係の現実

話を元に戻しましょう。経営者の深刻な悩みの一つに子供との関係があります。
裏返すと、子供にとっての深刻な悩みに親との関係があります。

家族のコミュニケーションは実は、ほぼ例外なく非常に難しいのですが、親はその難しさを深く認識せず自分のところはなぜこうなのかと悩んでいるケースが多いのです。

家族には歴史があります。
親と自分の関係であれば、自分が生まれた時、いや正確には自分が生まれる前の母親の胎内にいるときから関係が始まっています。
親は自分の子供との関係も、自分では「こんなに可愛がってきた」、「何不自由なく育てて来た」、「子供の意向を十分に聞いてきた」といったことを思いたくなります。

しかし、現実は異なります。
子供は何でも正直に親に伝えているわけではありません。
親にこう言ったら、きっと感情的になるなといったことも長年の経験から理解しているため、あえて言わないことが多いのです。

親として言うべき言葉は、「ホンネで話してくれてありがとう」

そうしたことを避けてホンネで語り合うために、親には何が出来るのでしょうか。
真にレジリエンスの高い経営者であれば、「ホンネで話してくれてありがとう」という言葉を使うことでしょう。
なかなか難しいのですが、これが言えることが子供と語り合う条件となります。

次回は「経営者の従業員の関係」というテーマを考えてみます。
レジリエンスの高い経営者とそうでない経営者の差は、こうした人間の基本的なことをどれだけ深く理解しているかどうかということにも関連します。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
http://miyamacg.com/