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益田 和久

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第70回 可能性を広げる

2022/07/07

先日の日本経済新聞に、2023年春開校予定の私立高等専門学校「神山まるごと高専(徳島市)が、全学生の5年間の授業料を全額無償にするという記事が掲載されておりました。

コンセプトはデジタル人材や起業家の育成で、名刺管理サービス「Sansan」創業者の寺田氏やIT企業の経営者の方々が中心となって設立されています。
無償化にするスキームとしては、国内外のIT企業や起業家個人からの長期的な寄付や基金のようで、既に伊藤忠グループやデロイトトーマツコンサル、ミクシィの笠原氏などから拠出の申し入れがあって、資金集めは順調に進んでいるようです。
加えて、開校初年度の授業料は企業版ふるさと納税などを活用して無償化が決まっているようで、あとは全学年を無償化に向け、設置した基金の運用益を回して、給付型の奨学金の方式をとるようです。

資金背景や運用のスキームはうまくできていますし、魅力的な内容ですよね。
創設者の寺田氏も「ビル・ゲイツ氏など世界の著名な起業家は奨学金があって学問を続けられたから起業できた」といっており、近い将来、日本のデジタル界を牽引する若き天才が輩出されるのが楽しみです。
学校のHPも見ましたが、大人の私が入学したいと思うくらいワクワクする内容でした。
目指す人材像や学習形式は、企業の人材戦略を見ているようです。
講師陣も実際の起業家で名だたる人がラインナップされていて、子どもたちが希望するよりも、親御さんが入学させたいという声が多いのではないでしょうか。
かなりの競争率になるのではないかと思います。

今回素晴らしいと思ったのは、15歳から起業家を育成していくというコンセプトで、講師陣も起業家ばかりだということです。
人によって将来の進路を決める時期は違いますが、大学受験(志望校選定)のときが一番多いのではないでしょうか。
その自分の進路を決めるときに、どんなアドバイスを受けられるかはかなり重要な気がします。
学校や学習塾の進路指導はあくまで「どこの大学なら合格できるか」ということが中心で、自分の将来のキャリアという話にはなりませんよね。
対応する先生もキャリア形成の話ができるわけでもありませんので、大まかな方向性だけを決めるだけかと思います。
就職活動を始める段階で、社会人になっている学校の先輩から業界や企業の実情を教えてもらい、現実的にキャリアを考えるようになるわけですが、もう少し早い段階からキャリアに関する情報を得ておけば、自分の可能性を広げるチャンス(機会)が増えるような気がします。

私の出身高校(鹿児島)は同窓会活動が活発で、大学生向けに就職活動のイベントを開催したり、各種のサークルがあって、大学生や若手ビジネスパーソンの就職(転職)相談を受けているのは日常の光景です。
そして、それ以上に私が素晴らしいと思っているイベントは、現役高校生(2年生)が修学旅行で上京したときに、在京の卒業生が職場見学をさせてくれることです。
企業紹介の映像や展示物の説明、会社や工場など実際に働く現場の見学、その業種、職種に必要なスキルについてのレクチャーを卒業生が自らやってくれます。

約2時間。
私もオブザーブしたことがありますが、自分が高校生のときにこんな機会があったら、人生選択は変わっていただろうなと思います。
現役高校生も、事前学習で業界(企業)研究をしており質疑応答もハイレベル。
実際に、その職場見学で影響を受けて、または他の友達が参加した職場見学の話を聞いて、進学。
就職を決めた後輩たちがたくさんいます。

昨今、教育の無償化が叫ばれておりますが、未来を担う若者たちの可能性を広げていく観点から、その方向性としてはいいと思います。
ただ、単に費用を無償化するだけではなく、神山まるごと高専の起業家育成のように、社会に貢献できるような人材に育てていくしくみやしかけも同時に必要ではないかと感じる今日この頃です。