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益田 和久

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第60回 デジタルが人の「チカラ」を引き出す

2022/04/28

前回の投稿で、デジタル技術でペットの飼い主を支援し、飼育環境を改善する「ペットテック」のことを書きました。
飼育過程において「言葉が話せない」ことによる様々な困りごと」を、テック(技術)で乗り越えていくわけですが、近年のIT技術の急速な進化によって、あきらめかけていた「困りごと」を乗り越えられる可能性が、私たちの日常生活におけるあらゆる場面で垣間見えてきたと思います。

先日の日本経済新聞に「IoT(身の回りのものがインターネットにつながる技術)」が、少子高齢化社会の最大の課題である「介護」のしくみを変えていく動きが広まっていくという記事がありました。
排泄予測支援機器が失禁を、AIで転倒リスク予測する機器が転倒事故を、それぞれ5割、8割減らしたというのです。
2025年問題(「団塊の世代」が75歳以上となるとき)が目前となってきた今、介護が抱える本質的な課題解決に向けて注目されているようです。

認知力の低下によって尿意への反応が遅くなったり、足腰の弱体化によってベットから下りるときに転倒しやすくなることは、加齢による衰えという観点からすると致し方のないことです。
特に尿意への反応の遅さは、おむつの着用の必要性や、介護する側も数時間おきにトイレに連れて行くなどの負担がかかります。
失禁した場合、ご本人も精神的にもダメージがあり、排泄の失敗などは清掃等の手間が加わってきます。
転倒事故については、そのまま寝たきりになってしまうというリスクがあります。これらの事象について、現在はマンパワーをメインとして対応しているのが実情のようです。
施設、自宅を問わず、介護する方の負担が大きいことは周知の事実です。

このような事象に対して、技術を活かして人的負担を軽減していくことを「介護テック」というそうです。
先程紹介したような排泄予測や転倒防止の機器だけではなく、歩行を始めとする体の動きを補助するパワードスーツや遠隔見守り機器等、様々な用途に合わせたツールは着実に広がってきています。

私は専門的なことには知見がないので、今後の展望や課題については言及できませんが、これはいいことだと感じたことがあります。
それは、介護する側の負担軽減だけでなく、介護される側の自立も促進できることです。
失禁がなくなる(自分で排泄管理ができる)ことや介助なしで歩けることによって、ご本人が自信を取り戻したり、明日への希望が湧いてくることです。
身体的な衰えを技術的な補助でカバーすることによって、各々が自立して楽しく過ごしていける。
それが技術の本来の役立ち方でありますし、今後IoTが担うべき優先的課題なのかと思います。

介護というと重たい言葉に聞こえますが、自立支援、自立補助という観点から、この「介護テック」の領域がもっと広がるといいなと感じて、こういった情報を積極的に発信していくことも、自分の役割なのかなと感じた今日この頃です。