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星 寿美

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第38回 社員がモンスター化するとき&解決事例

2022/01/02

社員がモンスター化して、困ってしまったことがきっかけで、私のコンサルティングを導入してくださった会社が3社あります。

いずれも、問題が起こってしまった後には、弁護士・社労士という専門家にお任せできるけれど、モンスター化しそうな社員をどうしたらいいのか?再発防止をどうしたらいいのか?

また、専門家に対応はお願いしているけれど、経営者ご自身のモヤモヤが解消できず、とにかく相談したい!とご連絡をいただきました。

他にも、私のコンサルティングをすでに導入していた会社でも、モンスター社員に『正論で対応』してしまって拗らせてしまい、拗らせてから相談がきて、解決したパターンもありました。

これらの経験を踏まえて、今日の記事では、

・モンスター社員とは?
・どんな社員がモンスター化するのか?
・モンスター社員には、どのように対応したらいいのか?
・解決事例

という内容で書きたいと思います。少しでも参考になれば幸いです。

モンスター社員とは?

大きく分けて2種類のモンスター社員に分けられると思います。

非常にわかりやすいモンスター社員と、一見わからないモンスター社員です。

まずは、非常にわかりやすいモンスター社員の特徴の一例です。
(全てに当てはまるわけではありません。また、当てはまる特徴があったとしても許容範囲の場合もあります。)

・入社後数ヶ月で、周りの人間と問題を起こす。
・自分は何も悪くない、と思っている。
・会社や周りの人にひどい扱いを受けている、などの『被害者意識』が強い。
・自分の主観のみの正義感で(本人としては良かれと思って)仲間に対して正しさを押し付けたり、強い指導をしてしまう。
・全ての話を自分に都合よく解釈し、都合が悪いことは耳に入らない。
・すぐに労基署などに駆け込んだり、会社を訴えたりする。

また、一見わからないモンスター社員とは、会社からの評価も高く、在籍期間が長い場合もあります。
では、なぜモンスター社員なのか?

例えば、その人がいると、新しい人が次々にやめてしまう、などがあります。
その人は会社からの評価が高いので、会社側は「今の若い人はすぐに辞めてしまう!」などと辞める側に原因があると思ってしまいがちです。
しかし、その人が一人いることで会社の損失は、とても大きいのです。

このような問題を見つけて解決するには、全社員への個別社員面談で、表層ではなく深い対話を重ねることが大事です。
その過程で問題にも気づけるし、解決に至ります。(長くなるので、具体的解決事例は別記事で書きます。)

今回の記事では『非常にわかりやすいモンスター社員』について取り上げます。

どんな社員がモンスター化するのか?

初見では、全く見抜けないほど『できるように見える。』『明るくてやる気のあるように見える。』人が多いので厄介です。

「いい人を採用できた!」と喜んでいたのも束の間、数ヶ月で同僚や先輩たちと何かしらのトラブルを起こし始めます。

もちろん、その人に問題はないのに、トラブルが起こることもあるので、トラブルを起こしたからといって、すぐに問題視することは危険です。

しかし、トラブルが起きると、当事者たちから話を聞くことになりますね。
その対話の内容で「もしかしたら?」とモンスター化するかどうか予見し、予防することができます。

では、どんな人がモンスター化するのでしょうか?それは、先にあげた特徴が見え隠れする場合です。

例えば、入社後数ヶ月しか立っていないにもかかわらず・・・

「私は、笑顔で挨拶しているのに、挨拶すら返してくれなくて苦しい。でも頑張るしかないから頑張ります!」

「この場合は、こうするべきなのに、していないから注意したら文句を言われた!」

などのように『〜してくれない。』『〜すべき。』が多かったり強かったりする話し方をされる方。こういう方はモンスター化する可能性があります。
(もちろんしない場合もありますが、この時点で気づいて予防すればモンスター化を防ぐことができるのです。)

特徴としては、
・『被害者意識』が強い
・自分の主観による『正義感(〜すべき)』が強すぎる
・自分を棚に上げて『人を変えよう』とする。
・つい共感してしまうほど、同情を誘うような『話し方がうまい』
・人と『対立』する考え方をする。
・『自分は正しい、相手が悪い』という意識が見え隠れする。

などが挙げられます。

モンスター社員には、どのように対応したらいいのか?

まだモンスター化する前であっても、またすでにモンスター化し、労基署に駆け込んだり、会社を訴えるなどの行動を起こしている場合でも、対応は同じです。

まずは、その人の話を『ありのまま聴く』こと、が最重要です。
そして関わりのある周りの人の話も『ありのまま聴く』ことです。

傾聴という言葉が数年前から流行り始めましたが、それとは、少し違う気が私はしています。

傾聴とは『言葉だけではなく感性をフル活用して聴くこと』や『相手の立場になって、共感して聴くこと』などと言われることが多いのですが。

『ありのまま聴く』は、もっとシンプルです。
ただ『聴く』だけなのですから。

人は誰もが、相手の立場を想像することはできても、本当には人を分かることはできない。
そういう前提から、ただ『ありのままを聴く』ということです。

逆に、共感して心を閉ざされてしまうこともあるのです。
例えば「その辛さ、私も似たような体験をしたから分かるよ。」と共感した時、相手は「でも、私の場合よりずっと恵まれた状況よね。それで分かるなんて言わないで!」と感じてしまうかもしれないのです。

だから、大切なのは「そうなんだね。」「そうだったんだね。」「なるほど。」「うんうん」と、ただただ「ありのままを聴く」だけ。

本来は一番シンプルで簡単なこの聴き方を、私たちは育つ過程でも学校でも社会でも教わらずに来ています。
もちろん自然にできている人たちはいますが、ほとんどの方が、自分の中の「こうするべき」や「普通はこうだ」などの概念を持っていて、それを脇にひょいと置いて、ただありのまま聴く、もしくは、ありのまま聴いてもらう、という経験をしていないのです。

だから、難しく感じるし、ただ知らないのです。

では、ありのまま聴いてもらえるとどうなるのでしょうか?

本当に自分の話をありのまま聴いてもらえると人は安心します。
喜びと安らぎを感じます。
相手を信頼します。

自分の話を聞いてくれた、という安心感で、心に少しスペースが開きます。
そのスペースで相手の話を聞こうとします。
だから深い対話が生まれ、相互理解が深まります。
この対話のプロセスでモンスター化を予防できるし、例えば拗れてしまった関係も修正することができます。

ただありのままを聴いていると、自然に疑問が湧いてきて、さらに相手を知りたいというピュアな気持ちからの良質な質問が生まれます。
質問を重ねることで、さらに、ちゃんと聴いてくれた!と感じます。

(ただ、この質問が誘導尋問だったり、興味本位や表層的だと全く逆効果になります。)

そして、理論ではなく、感情に着目します。
怒りやモヤモヤというマイナス感情を掘り下げて、感情の奥にある本当にその人が大切にしている価値観を言語化します。

すると本当に「あぁ、自分の話を聴いてもらえた。受け入れてもらえた。」と感じると同時に、本人の自己理解も深まり、心がスッキリします。

実際には、聞き手は、共感もしていないし価値観も真逆かもしれません。
けれども・・・

「あなたはそう思っているんですね。」
「あなたはそう感じているんですね。」

と、ただありのままを聴くことで、話し手が「聴いてもらえた」と感じることができるのです。

どんなに深く共感していても、話し手が「それはあなたの場合でしょう。」とモヤモヤしてしまっては、聴いてもらえた感はなくなりますが、

全く共感していなくても、ただありのままをそのまま聴き、適切な質問で理解を深めるだけで、話し手は「ちゃんと聴いてもらえた!」と感じるものです。

要は、話し手が「聴いてくれた」と安心できれば聴けているし、話し手が「聴いてもらえてない」と感じれば聴いていないんです。

聴いているかどうかは聞き手ではなく話し手が感じることなのです。

そして、組織内の対立を解決したり、モンスター社員を解決したりする場合は、この「ありのままを聴く」ということが最重要ポイントです。

どうしても主観や自分の考えに捉われて、ただ、ありのままを聴くということが難しく感じてしまうことが多いようですが。しかし、習慣になってしまえば、ありのまま聴くことが一番簡単!シンプルです。

しかも、共感なども必要ありません。

特にモンスター化しやすい方は、自分のことを「わかって!わかって!」という承認欲求を人よりも強く持っていたり、自分の正しさを証明したがる傾向にあるので、ありのままをただ聴くという、そのプロセスは外せないのです。

解決事例

長くなってしまったので、解決事例を簡単に紹介して終わりにします。
また別の記事で、事例の詳細や他の事例も紹介したいと思います。

建築業、中途採用40代男性。
声も大きく自信があるように見えるので、期待の中途採用でした。
しかし、入社後3ヶ月もたたないうちにチーム内で問題を起こすように。
周りのチームメンバーもどう扱っていいのかわからず『めんどくさい人』扱いに。
もうすぐお試し期間が終わるという5ヶ月目に、労基署に訴え、モンスター社員に。
その段階で私のコンサルティングを導入してくださいました。

本人と周りの方々、全員と個別面談をし、感情についての研修を実施しました。
特に本人とは何度も時間をかけて対話を深めました。
その結果、訴えることもなく、会社やチームメンバーに感謝の気持ちを持って、気持ちよく転職されていきました。

この事例のように感謝を持って気持ちよく転職される場合、または辞めずに、本人もチームも共に成長する場合、部署を変えたことで適材適所になり本人が成長する場合など、色々なパターンがあります。

いずれの場合でも、深い対話のプロセスで、どんなに拗れた関係も、どんなに強烈なモンスター社員も気持ちよく解決することが可能です。

社員がモンスター化して、訴えるなどの行動を起こした後は、弁護士などの専門的な(法的な)解決が必要ですが、その手前では、このように感情レベルの解決が重要だと、私は日々感じています。

人は理論ではなく感情で動くもの。もっと感情のことを広めたい!そして、誰もが、どんなに拗れた関係も根本解決できるような聴き方、対話ができる社会にしたい!そんな想いで日々、邁進しています。