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星 寿美

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第36回 『怒り』の感情をコントロールしてはいけない!

2021/12/19

最近、怒りを感じたら6秒待てとか、怒りをマネジメントしようということが言われていますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

その場凌ぎの対応としては、もしかしたら有効な場合があるかもしれませんが、根本解決にはなりませんし、その場凌ぎとしても、もっと有効な方法はあります。

私は、怒りという感情を、コントロールしたり、発散して紛らわしたりなどの表面的な対応が主流の現代に懸念を抱いています。

というのは、私はこれまで『怒りの感情』を大切に扱い、丁寧に掘り下げ、その感情が起こる『理由』を言語化することで、多くの拗れた対立を根本解決してきているからです。
もし、そのプロセスの中で怒りをコントロールしたり発散したりなどしたら、解決にいたらないと思えるからです。

そして、多くの企業に関わると、ある一定のリーダーたちが『怒り』について悩んでいることがわかりました。
なので、今日はその『怒り』について悩んでいるリーダーに向けて『怒り』を解説しようと思います。

リーダーたちの『怒りの悩み』とは?

怒りを伴って部下に伝えてしまうタイプのリーダーの悩みは、大きく分けて二通りあるかと思います。
熱意が伝わらないと悩んでいるか、怒りたくないのに怒ってしまうと悩んでいるか、です。

熱意が伝わらないと悩んでいるリーダーの気持ちは、例えば、
「部下のためを思って言っているのに、なぜ伝わらないんだ!」
「自分しか言う人がいないから、言わなきゃいけないことを言っているんだ。」
「こうやって自分も育ててもらったのだ。こんなことで挫けるくらいなら他でも勤まらんぞ!」
「態度をもっとはっきりしろ!わかったのかわからないのか、もどかしい!」
「俺が鍛えてやる!」「私が育ててやる!」などです。

怒りたくないのに怒ってしまうと悩んでいるリーダーの悩みは、例えば、
「また怒鳴ってしまった・・・」
「普通に話したいのに、つい感情的になってしまう。」
「話しているうちに、エキサイトしてしまう。」
「感情をマネジメントする研修をうけ、だいぶ抑えられるようになってきたが、もっと頑張らないと。」などです。

いずれにせよ、怒りと言う感情に対して悩んでいるリーダーたちです。
そして、怒りを表現した後の結果、もしくは怒りという感情そのものについて、悩んでいるという共通点があります。

怒りという感情には、必ず『理由』があります。
その理由に焦点を当てずに怒りや怒りの結果に焦点が当たっているので根本解決につながっていないという現状です。

怒りのメカニズム

怒りの元は悲しみだと聞いたことがあるでしょうか?
実は、言語化されていない無意識レベルで感じている『自分が大切にしている価値観』が蔑ろにされると、人は怒りを感じます。

なので、怒りを感じたら、どうしてその怒りが出てきたのか『理由』を掘り下げることで『自分が大切にしている価値観』が言語化できます。

この時、怒りを引き起こした『きっかけ』を理由と捉えてしまうと何も解決できません。

例えば「あの人があんなに嫌な言い方をしたから、すごくムカついた。」という状況は、怒りを引き起こしたきっかけにすぎません。

「あの人があんなに嫌な言い方をしたから、すごくムカついた。どうして、あの言い方に自分は反応したのだろうか?どうしてムカついたんだろう?」

あくまでも自分以外のことではなく、自分の内側を掘り下げることがコツです。

そもそも、全く同じ状況でも、ムカつく人とムカつかない人がいます。
きっかけはあくまでもきっかけ。怒りという感情が出る『理由』が必ずあるのです。

例えば、同じような体型の女性が2人いるとします。
一人は自分の体型が気に入っていて、一人はコンプレックスを感じています。
そんな二人に、同じように「デブ!」というと、最初の人は「あら、あなたはそう思うのね。私はこの体型が気に入っていてデブとは思ってないのよ。」と思い、後の人は酷く傷ついてしまいます。

このように、内側の価値観によって、結果が違います。
だから、きっかけは関係なく、理由を掘り下げることが大事なのです。

さらに、深く傷ついた人は「どうして傷ついたんだろう?そうか、自分が自分を、こんなに太っていてはいけない!痩せなくっちゃ、って自分を否定していたからだ。ありのままの自分を受け入れていなかったからだ。」などと気づくかもしれません。
さらに「本当は自分のことをありのまま愛したいんだ。」という大切な価値観に気づくかもしれません。

怒りや悲しみ、もやもやのようなマイナス感情は、自分が本当に大切にしている無意識の価値観を言語化できるチャンスです。

怒りやきっかけではなく『理由』を言語化して、それを伝え合えば、どんなに拗れた人間関係も解決できます。

だから、怒りをコントロールして、その場凌ぎの対応するのはもったいないことなのです。
本当の自分に気づき言語化したり、対立を解決する機会を自ら避けているのと同じだからです。

部下への助言

先日、立て続けに3社で、感情についての研修をやらせていただきました。
リーダーも部下もほぼ全員参加でした。
いずれの企業でも『怒り』について悩んでいるリーダー、部下たちだったので興味を持って参加してくださいました。

リーダーがいる前で、私が部下たちに向けてお話ししたのが「怒りの感情は100%相手の問題。1%の責任も感じなくていいのです。同じことをしても怒る人と怒らない人がいるでしょう?部下の対応などが『きっかけ』にはなっているけれど、きっかけというだけで、怒りという感情は100%相手の問題なのです。」とお伝えしました。

さらに「どんな場合も、その関係を作っているのは半分ずつ。相手を変えることはできないから、自分の捉え方を変えれば、半分は関係を変えることができます。」

「例えば、怒りをぶつけれられて、今までは萎縮したり悲しくなったり、自分を責めていたりしていたとしても、もし、その『怒り』という感情は相手の問題だと知っていたらどうでしょう?」

「同じような場面で、怒りを一切受け取らずに『何を伝えようとしているのかな?』という部分に焦点を当てて話が聞けるようになりますよね?」

「怒りというエネルギーは大きいので、ついこちらも反応したり影響されたりしますが、怒りは100%相手の問題だと知ることで、だいぶ楽になりませんか?」

などとお伝えしました。それから全員で『最近あった、怒りを感じた場面』を具体的に思い出していただき、怒りの感情から『理由』を掘り下げるワークをしていただきました。

そのワークで出た『理由』をテーブルに出せば、お互いに理解しあえることを実感していただけました。

その時のコツは、相手を理解しなくても受け入れなくてもいい、という部分です。

自分の価値観を大切にできれば、相手の価値観も「相手の価値観は受け入れることはできないけれど、自分の価値観が大切なのと同じように、相手もその価値観を大切にしているんだな。」と理解しあえるのです。

対立ではなく、どっちも正しい!という世界観です。
さらに、お互いにありのままを受容できるコミュニケーションをとっていると「だったらこんなのは?」と全く別の第三のアイデアが生まれたりするクリエイティブな対話を創造できます。

怒りなどのマイナス感情を大切に扱うことで、改めて自分を発見し、自分につながり直せたり、相互理解が深まったり、クリエイティブな場を創造できたりします。
だから、私は怒りやもやもや(違和感)が大好きですし、大切にしたいのです。

まとめ

怒りという感情はコントロールしてしまっては、自分に気づいたり、対立を根本解決する機会損失になる。
だからコントロールしてはいけません。

『怒っていることを自分がありのまま受け入れて、大切に掘り下げること。』それをお伝えしていきたいと、企業に関わるたびに実感しています。