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深山 敏郎

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第19回 シェイクスピアの登場人物のレジリエンス(7)十二夜

2021/10/26

前回はシェイクスピア作品「空騒ぎ」の主人公の一角ベネディックについて、私なりに分析してきました。

今回はレジリエンス応用編の第七弾として、シェイクスピアの戯曲「十二夜」の主要登場人物の一人、「ヴァイオラ」のレジリエンスについて検討してみます。

「十二夜」は、恋愛とは何かを問う娯楽大作

「十二夜」は、シェイクスピアファンが大好きな作品の上位に掲げる作品の一つ。
40年以上前、東京大学名誉教授で翻訳家の小田島雄志(おだしまゆうし)先生に個人的にお話を伺う機会がありました。
英国文化庁主催のパーティーの席で先生はコップ酒を片手に、「僕は十二夜とハムレットが大好きなんだよ」と仰っていたことを、今でも鮮明に覚えています。
松岡和子先生に先駆けて日本で2番目にシェイクスピア作品を全作翻訳された方として有名です。
因みに、日本で最初に全作翻訳したのは坪内逍遥であることは、とても有名な話です。
坪内逍遥訳は、人の名前も日本の歌舞伎のような役名にしており、七五調など当時の日本人になじみのリズムを使っていました。
達人の域にいたのだと思います。
小田島先生や松岡和子先生は、現代の舞台で演ずる台本として翻訳していらしたことが印象的です。
私もある作品を演出する時に、小田島先生の本を使わせていただきました。

小田島先生は、渋谷の名曲喫茶「らんぶる」でシェイクスピア戯曲のジョークを翻訳していたそうです。
私も何度か、「らんぶる」に行ってシェイクスピア作品を読んだり、詩を書いていました。

翻訳家であり国語学者、そして演出家として活躍された福田 恆存(つねあり)先生は、小田島先生のことを「全作品を翻訳するなんて、常人のやることじゃないよ。彼は特別だ。」と仰っていました。
福田先生はどちらかといえば、芝居を演出したい、芝居作りをしたいという方だったのでしょう。
私にとって福田先生は演劇界の恩師のお一人で、厳しく、そしてとてもやさしい方でした。

さて、本題である「十二夜」に話を移しましょう。

「十二夜」のストーリー

この作品で活躍するのは双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラ。
船で旅をする途上、嵐に遭遇し、生き別れになってしまいます。
妹のヴァイオラはイリリアの浜に打ち上げられます。
彼女は身の安全のため、変装して男性を演じます。
そして、シザーリオと名乗り、公爵オーシーノーの身の回りの世話をするようになります。
公爵はオリヴィア姫に求婚していますが、姫は拒絶しています。
そこで若い男性に変装したヴァイオラ(シザーリオと名乗っている)が公爵の代理でオリヴィア姫のところに向かいます。
ところがオリヴィア姫は、変装したヴァイオラに一目ぼれしてしまいます。
ヴァイオラは、内心、公爵オーシーノーに惚れていて、という複雑な関係になります。

コミックリリーフ(笑われる役)として登場するのが、オリヴィア姫の執事マルヴォーリオ。
マルヴォーリオもオリヴィア姫に恋心を抱いていたのです。
この執事を良く思わない面々のたくらみで、すっかり笑いものにされるマルヴォーリオは、てっきり姫がマルヴォーリオに恋していると勘違いさせられます。
偽手紙に指示されている黄色いストッキングと十字の靴下止め、そしてにやにや笑い、というおかしな恰好で姫の前に現れます。
結果、姫に地下室に閉じ込められてしまいます。

数々の勘違いがあったのですが、最後は公爵とヴァイオラと、姫はヴァイオラの兄セバスチャンとめでたく結ばれます。

ヴァイオラのレジリエンス

今回も以下の代表的なレジリエンス要素を用いて分析をします。
1.自己効力感
2.感情のコントロール
3.思い込みへの気づき
4.楽観
5.新しいことへのチャレンジ

自己効力感は非常に高いと考えられます。
自分を信じ、いつかは望みが叶うという信念を持っています。

感情のコントロールも、得意であったと思われます。
すぐ近くにいて仕える大公に恋しているのですが、大公に打ち明けられない胸の内を耐え忍びます。

思い込みへの気づきという面では、この戯曲の中で推察することは困難だと思われます。
ただし、難しい状況の中で生き延び、そして夢を実現するには柔軟性の発揮が必要であったと思われます。

楽観という視点からは、あまり感じられません。
どちらかといえば、自分の人生や置かれている立場に悩み、苦しむという、いわばハムレット的な側面が強かったのではないでしょうか。

新しいことへのチャレンジという視点は、思い込みへの気づき同様に十分に発揮できていたと考えられます。
具体的には、身を守るために男装するなど、思い切った手立てを打ちます。

当時のシェイクスピア劇は、全員が男性で演じられていたという観点から、変装や役割転換など、今よりもやりやすいトリックだったのかもしれません。
日本にも、シェイクスピア以前の平安時代に書かれた「とりかへばや物語」というジェンダー交代をテーマに扱った文学もあります。
ジェンダーをめぐるさまざまな事を考えるにも、「十二夜」はもってこいの作品ではないでしょうか。

次回は恋愛の駆け引きを取り扱ったシェイクスピア喜劇「恋の骨折り損」の登場人物について分析してみましょう。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

また、シェイクスピアに関するビジネス活用のご参考として、拙著:「できるリーダーはなぜ「リア王」にハマるのか」(青春出版)があります。この書籍はシェイクスピア作品を通してビジネスの現場にどう活かしていくかを検討するために書かれました。

toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
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