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高松 秀樹

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第39回:新技術不要のイノベーション

2021/09/11

先日、あるセミナーで「意味のイノベーション」という話を伺いました。

ミラノ工科大学にて、マネジメントやデザインコースを担当するロベルト・ベルガンディ教授が提唱しているのですが、簡単に言えば「商品について、機能面で大きな進化を加えなくとも、消費者にとっての“意味を変える”ことでヒット商品は生み出せる」という話。

例えば、近年の欧州では「ロウソク」の消費量が増え続けているようなのですが、ロウソクはガス灯や電球が登場する前は、生活に「明かり」という価値を提供する一大産業だったものの、電球の登場と共に、斜陽産業になり、市場は大きく縮小してしまいました。

ところが、「部屋を明るくするもの」という意味から「部屋を暗くして、食事のムードを演出するもの」「癒しを与え、心を落ち着かせるもの」に意味を「再定義」したことで、ヒットを続けているのだとか。

アロマキャンドルのように香りを付加する製品改良は行われたものの、基本的な製造工程を大きく変えずに、イノベーションを生み出しているのです。

「意味を変える」には、「消費者の新しい行動に着目する」必要がありそうです。

そんな視点で世の中を見ると、国内でもいくつもの事例があがってきます。

「日本コカ・コーラ」では、今春、25年ぶりにメインのペットボトルの容量を変更し、スーパーから「500mlを無くす」改革を行いました。

消費者動向調査から、スーパーに置かれたコーラは、自販機やコンビニとは違い、家に持ち帰って家族や友人とシェアして飲むことが多いことが分かり、「1人でも飲みきれる350ml」と「シェアしやすい700ml」の商品を新たに販売して、ヒットにつながっています。

「イオングループ」でもキューブ型冷凍魚の「パパッとできるお魚おかず」が大ヒットしていますが、サーモン、サバ、タラ、ブリ、アジの骨を抜き、「キューブ型に加工しただけ」のもので、新技術などはまったく用いていないのです。「魚の切り方が分からない」「面倒」「骨が残っていると危ない」などの消費者の不満に耳を傾けた結果です。

既存の製品やサービスを、今の消費者が求める「意味・価値」にフィットさせること。たったそれだけでもヒット商品は生み出せるのですね。