第22回 「体調を壊して、社内のダメさがわかった。」By社長
2021/09/12
人生では、いろんなことが起こりますね。
例えば、社長が怪我をしたり病気になったりして『社員が社長と連絡が取れない!』という状況になった、という話しを、今まで多くの経営者の方々からお聞きしました。
その時の経営者の話は、大きく分けて2パターンあります。
『社員が一丸となって頑張ってくれた!』と感謝で乗り越える経営者と、
『うちの会社のダメなところがわかった。』と言う経営者です。
後者は「リーダーの判断で自由にやっていいから、(経営者が)戻るまで、仕事を回していて欲しい。」と指示を出したにも拘らず、リーダーたちが、判断も行動もできずグダグダで仕事が滞っていた、などの場合です。
さて、本当にそのリーダーたちがダメリーダー、ダメ社員だったのでしょうか?
実は、人間の能力にそれほどの差はないと私は思っています。
部下の能力を活かすも活かさないも、実は経営者次第です。
『社員が一丸となって頑張ってくれた!』と感謝で乗り越える経営者は、社員を活かせていて『うちの会社のダメなところがわかった。』と言う経営者は活かせていないだけだと私は思います。
ただ、社員を活かせていない経営者ほど『リーダーがだめだ!』『うちの組織はグダグダだ!』と部下のせいにしてしまって、ことの本質に気づきづらい傾向にあると感じています。
では経営者が『うちの会社のダメなところがわかった。』と感じとき、どのようなことに経営者自身が気づけば、一丸となって危機を乗り越えるような組織にすることができるのでしょうか?
日頃のコミュニケーションの賜物
さまざまな事情で経営者が急に不在になったり、何かしらの問題が起こった場合、社員が活躍するかしないかは、実は日頃のコミュニケーションにかかっています。
だから「グダグダだった!」という場合は、そうなるコミュニケーションを日頃からとっている、と言うことです。
例えば、せっかく部下がアイデアを言ったり、相談してくれているのに、表面上は話しを聴いているふりをして、心の中で「それじゃだめだ。」「わかっていない。」などと否定していないでしょうか?
また、否定をしていない場合でも「なんでそう思ったんだ?」「じゃぁ解決策はなんだ?」「どうしたいんだ?」と質問ぜめにしていないでしょうか?
これらは一見、ちゃんと話を聞いているし、さらに理解を深めようと質問もしていますよね。
けれど、問題は、そういう表面に現れる『形』ではないのです。
何を言いたいか、というと。
『経営者が思っていることが正解で、それ以外は違う。』と無意識に思っているのではないですか?と言うことです。
例えば、経営者が部下に「自由にアイデア出して。」「なんでも相談して。」と伝えます。
部下は、それを実行します。
実行しても『結局は経営者が思っている通りにしかならない。経営者の中に答えがあって、それが絶対の答えなのだ。』という、このパターンを繰り返すと、部下は「言っても無駄。」「どうせ言っても伝わらない。」と学んで、言わなくなります。
経営者からすると、そこが全くの無意識なので、
「ご飯を一緒に食べに行って、話をたくさん聞いてあげているし、なんでも言ってくれと常々伝えている!こんないい会社は、他にないよ。ここでできなきゃ、仮に他のどの会社に行ってもダメだね。」
と、このくらい思っていることが非常に多いのです。
しかし、実はこの現象はまさに『日頃の経営者のコミュニケーションの賜物』です。
他の会社に行けば、実はものすごい力を発揮できる人財かもしれないのですよ。
けれど、そこに気づけずに「こんなに話を親身に聞いているのに。」「こんなに自由にやってみろ!責任は俺が取るからやってみろ!」と伝えているのに、部下たちは自分からやろうとしない!と経営者自身が部下に対してストレスを溜めている場合が多いです。
権限の範囲が明確になっていない
「自由にやってみろ!責任は俺が取るから!」と言っているにも拘らず、部下がアイデアを出さず、自分からやろうとしない。
この場合は、権限の範囲が明確になっていない場合が多いです。
どこまで自由にやっていいか分からないために自由にやりようがない、と言うのが本当のところで、その部下の能力とは関係ないんですよね。
例えば『予算いくらまでなら自由に判断していい。』『ここまでの指示に関しては自由に決めていい。』などと範囲が明確だと、その中で自由にできます。
なぜか?
部下は、誰も『自分が経営している会社』ではないからです。
もし、範囲が決められていない中で自由に判断し行動できる人なら、経営者になっています。
経営者以外の人は、決められた範囲の中で自分を発揮するしか出来ないですよね?逆に、本当に自由にされてしまったら、経営者は非常に困りますよね?
お互いに『責任範囲』を明確にすることは必須です。にも拘らず、この『責任範囲』を明確にすることなく、自由にやれ!もっと能動的に動け!と言う経営者が中にはいます。
それは、とても難しいことなのです。
社長がいなくても回る仕組みを構築する
回る仕組みの土台にあるのは『信頼関係』です。
「自由にやっていいって言っているのにやらない!うちのリーダーはダメだ!」などと感じていたら、信頼関係を築くことは難しいでしょう。
人は、自分を否定する人を好きになれないからです。
どんなに表面上、いいことを言っても、何度も一緒にご飯を食べに行って話を聞いても、その部下に対してどう感じているか?は、言葉にしなくても伝わっています。
まず、相手を信じること。そこから信頼関係は始まります。
なので「社内のダメさがわかった。」などと部下たちを『ダメだ。』と捉えている限り、信頼関係を築くのが難しい、と言うことです。この部分は『経営者の器』とも関係してきます。(『第10回 経営者の器とは?記事参照。)
「社内のダメさがわかった。」ではなく「日頃の自分のコミュニケーションを見直す必要がある。」と、自分の課題に気づけるかどうか?です。
もし、経営者が部下のせいにしていたら、部下も同じように経営者のせいにします。
どんな状況であっても、経営者自身が「自分の課題」と捉えられれば、部下たちも同じように「自分たちの課題」と捉えるでしょう。
そして経営者が部下を信頼したら、部下も経営者を信頼します。
経営者の「捉え方」「在り方」が土台にあって、その土台の上に「仕組み」を構築します。
ここで言う仕組みとは、いくつかあります。
例えば、
・リーダーたちの権限を明確にする。
・自走組織運営にする。
・たった一つのルール(行動指針)を明確にする。
・フラットに建設的意見を出し合える会議をする。
・会社の目標と一人一人の自己実現を一致させている。
などです。
これらの仕組みが機能するのは、信頼関係があってこそ。
だから、私はまず、人間関係を解決し、ありのままを受容し合う関係の質を上げる、毎回そこから始めます。
組織内が、ありのままを受容しあえる関係だと、意見を自由に出し合えるし、同じ目標に向かって本音で建設的な意見を出し合うことも自然にできます。
社長がいなくても回る仕組み、また、さまざまな事情で急に社長が会社に来れなくなっても『社員が一丸となって頑張って乗り越える組織』、それは、日頃の経営者との関係性(信頼関係)がまず土台にあり、その上で仕組みがあり、実践できていることが大切です。