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益田 和久

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第261回 広がる「AI先生」の活用から学ぶ、社会人に求められる基礎スキル

2026/03/05

先日、日本経済新聞に「『AI先生』を思考のパートナーに、各家庭で適正利用を模索」という記事が掲載されました 。
子どもが宿題で行き詰まった際、まず生成AIに相談するという光景が、もはや特別なものではなくなりつつあるという内容です 。

記事によれば、小中学生の55.1%が対話型AIを利用しており 、英作文の添削や 、図鑑を読んで浮かんだ疑問の解決など、非常に理想的な使い方が紹介されていました 。
忙しい保護者にとっても、いつでも気軽に相談できる「AI先生」は心強い存在でしょう 。
大人が仕事や家庭で、そして子どもが進学や勉強でAIを活用していくことは、もはや社会のスタンダードです。
私自身も、これを使わない手はない(使わないのはもったいない)とすら思っています。

一方で、保護者や教育現場が抱く懸念も浮き彫りになっています。
調査では、親の不安として「子どもが誤情報を信じること」や「思考力や創造力の低下」が上位に挙がっていました 。
ある保護者の「最後は自分で考えるようにしてほしい。
AIがないと生きられないようになってほしくない」という切実な声は 、多くの大人が共感するところだと思います。
文部科学省も学校向けの指針を示し 、社会全体で適正な利用やリスク管理を模索する動きが始まっているのは、非常に良い傾向です。

実はこれ、全く同じことが大人の世界、つまり企業の人材育成の現場でも起きています。
最近では、企業様から「AI活用を日常の業務フローに組み込んだ上で、適切な使い方を指導してほしい」というご要望が着実に増えています。
その中で私が最も懸念しているのは、仕事における「基本的な知識や考え方」が身についていないまま、安易にAIに答えを生成させることが当たり前になってしまうことです。
AIがもっともらしい答えを出してくれたとき、自分の中に基礎となる軸(判断基準)がなければ、それが良いのか悪いのか、実態に合っているのか間違っているのかをジャッジできません。
「念のため、別のAIにダブルチェックさせればいい」という単純な問題ではないのです。

最も怖いのは、AIが作ったアウトプットを見て「自分自身の能力で成果を出せている」と勘違いしてしまうことです。
野球で例えるなら、AIを使えば、自分のバッティングスキルがなくても自動的に「3塁」まで進めてもらえるようなものです。
しかし、最後にホームベースを踏んで得点にするためには、やはり「自力」が不可欠です。ある程度のビジネス経験を積み、基礎スキルを持った人がAIを使えば強力な武器になりますが、基礎が「スカスカ」の状態でAIを使っても、結局は薄っぺらい、表面的な回答しか生み出せません。

学校教育の現場では、子どもたちの「学ぶ力」や「想像力」を育みながら、AIの効果的な利用を目指す試みが始まっています 。
私たち社会人の能力開発も、それに合わせてアップデートしていかなければなりません。
ただ「AIの便利な操作方法」を教えるのではなく、仕事の原理原則や自分の頭で考える力といった「基礎体力」の育成とセットで伝えていくこと。
これからの時代の能力開発のあり方を、教育現場の試行錯誤からも学びながら、改めて深く見つめ直したいと感じる今日この頃です。

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