先日の日本経済新聞に「どのビジネスマナー最重視? 商社・コンサルは『上座・下座』」という記事が掲載されました。
4月の新入社員研修を中心に、通年にわたってビジネスマナーに関するコンテンツを提供している弊社にとって、非常に興味深い内容でした。
記事によると、求人サイト「エン転職」の調査で、ビジネスマナーの必要性について「必要」「どちらかと言えば必要」が合わせて98%を占めたといいます。
重視するマナーは「挨拶」(85%)、「言葉遣い」(82%)、「報告・連絡・相談」(76%)の順に多かった一方で、「名刺交換」(26%)や「上座・下座」(24%)、「社外訪問」(23%)は4分の1程度にとどまりました。
さらに興味深いのは、業種業界によって重視するビジネスマナーが異なるという点です。
商社やコンサルティングでは上座・下座、建設・不動産は社外訪問、流通・小売り・サービスは挨拶、IT・ゲームはオンライン会議のルールや社内チャットツールの使い方が重視されているといいます。
私自身、さまざまな業種のお客様と接する中で、この違いは肌で感じていました。
クールビズをきっかけとしたビジネスカジュアルスタイルの浸透や、リモートワークによる対面名刺交換の機会減など、仕事のスタイルは確実に変わってきています。
であれば、ビジネスマナーについても、時代に合わせたブラッシュアップが必要なのは当然でしょう。
しかし、だからといって「すべてを変える」という話ではありません。
記事を見ても明らかなように、挨拶や言葉遣い、報・連・相といった基本中の基本が上位を占めているのは確かです。ここはブレずに教育すべきポイントだと思います。
ただし、報・連・相一つをとっても、今はメールやチャットが主体になっています。
「報告は直接口頭で」という時代から、「まずはチャットで簡潔に伝え、必要に応じて詳細を文書で」という時代へと変化しています。
具体的な手法については、各社で一定のガイドラインを定める必要があるのではないでしょうか。
記事では、年代による意識の差も指摘されています。
深夜や早朝のメール・チャット送信について、20代が60%気になると答えたのに対し、40代以上は52%。社外の人に対して上司を「さん付け」で呼ぶことについても、40代以上の49%が気になるのに対し、20代は38%だったといいます。
この世代間のギャップは、研修の現場でもよく感じることです。
「以前は社外の人の前で上司に『さん』を付けるのはあり得ないという認識だった」と記事中の調査責任者も語っていますが、今の若い人たちは「誰に対して何が失礼にあたるのか」を自分なりに考え直す傾向が強まっているのでしょう。
ここで大事なのは、一つひとつの「所作」が何の意味を持つのかを、しっかりと理解させることだと私は考えています。
そして、教える側もそれをよくわかっていなければなりません。
「昔からそうだから」ではなく、「なぜそうするのか」を説明できる必要があります。
その観点から考えると、社内で優先順位をつけて教育したほうがよいでしょう。
実際、弊社でも「来客へのお茶の入れ方、出し方」というコンテンツは、ほぼ取り扱わなくなりました。
それは、実務での重要度が相対的に下がってきたからに他なりません。
4月に向けて、お客様やビジネスパートナーと話をしながら、これからのビジネスマナーについて考えていく必要性を感じています。
時代に合わせて変えるべきものは変え、守るべき基本はしっかりと守る。
そのバランスを見極めながら、本当に意味のあるビジネスマナー教育を提供していきたいと感じている今日この頃です。