毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの175回目では、「刑罰無用のこと」を検討してきました。 老子は言います。
「天道こそ、いっさいの秩序の根源である。『道』にはずれた行為には、かならず破局が目立つ。天道に代わって人を罰するのは、大工をまねて木を削ることに等しい。しろうとが大工をまねれば、けがをするのがおちだ」と。
今回は「為政者の悪」です。
老子は言います。
「人民の生活が苦しいのは、為政者が租税を取りすぎるからだ。これでは、生活ができるはずがない。人民が反抗するのは、為政者が強制手段に出るからだ。これでは、服従するはずがない。人民が生命を大切にしないのは、為政者が欲望をそそりたてるからだ。これでは、長生きできるはずがない。人民を愛する政治とは、作為せず自然にまかせる政治のことである」と。
「為政者の悪」とは何か
今回は老子の言葉「為政者の悪」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は言います。
「人民を愛する政治とは、作為せず自然にまかせる政治のことである」と。
「為政者の悪」をビジネスにあてはめてみると
この言葉を私たちのビジネス、特に組織運営、より具体的には経営者と従業員の関係にあてはめてみましょう。
会社では利益をあげるために、もし売上増が見込めない場合にはいろいろなコストカットをします。
その中には、外注費の削減などと同様に、労務費用の削減などをします。
個別の従業員の賃金を下げることが難しければ、少ない人数でこれまでと同様、あるいはこれまで以上の仕事をさせようとします。
生産性が向上するような方策が充分にされているのであれば別ですが、そうでなければこれはいわゆる”労働強化”であり、現場にひずみが生じます。その結果として、労災事故の増加、従業員の病気発症率の向上などが起こり、結果として生産性はがた落ちになることが一般的です。
こうしたことが起こるのはなぜでしょうか。
ビジネスが順調なうちは良いのですが、経営環境が悪化したり、自社に大きな問題が起こると経営者が不安をかかえ、冷静な判断ができなくなってしまうからではないでしょうか。
こうした状況に陥る前に、このようなことがあり得るので、周囲からのアドバイスに耳を傾けることが望ましいでしょう。
そのためには信頼できる社内外の人たちとのホンネでのコミュニケーションを取ることが良いのではないでしょうか。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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