毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの147回目では、「足るを知る」について検討してきました。 足るを知らない心と、飽くなき欲望とが大きな災厄の原因であるとのことでした。
今回は、「居ながらにして天下を知る」です。
「居ながらにして天下を知る」とは何か
今回は老子の言葉「居ながらにして天下を知る」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は言います。
「道」を体得していれば、外を探し回らなくても天下の動静が分かるというのです。
絶えず外に正解を求め、駆けずり回るほど迷い、知識があやふやになります。
「道」を体得できている人は、外界の基準に頼ることなく物事を理解し、また、感覚器官に惑わされません。
「道」のみを基準としていれば、知ろうと思わずとも物事を知ることが出来るのです。
そこには焦りもおごりもなく、ただただ物事の本質を知るのです。
物事の本質を知る
物事の本質とは何でしょうか。
難しい理屈を抜きにして、非常にシンプルに、人間として自然の摂理に合致したこと、つまり「道」のみを頼りに生きることで見えてくるものです。
例えば、他人を欺いてはいけない、無理をしてはいけない、自然は私たち人間の恣意に従うのではなく、自然のもつ、いわば「道」ともいうべき摂理を内包しているといったことを理解すればよいのです。したがって、物事が良い方向、あるいは悪い方向へ進んでいるように思える場合でも、表面にあらわれた事象の背景に必ず自然の摂理があるということです。
ビジネスにおける自然の摂理とは
ビジネスであれば、ステークホルダー(利害関係集団)のそれぞれ、つまりお客様、資本家、従業員、取引先、一般社会等にバランス良く配慮した意思決定をしていれば、おのずとうまくいきます。
そのバランスが崩れて、例えば資本家の利益に偏った経営をすると、従業員や取引先などから目に見える形かどうかは別として、不満が出ます。
目の前のお客様にのみ配慮しても同様です。
例えばB2Bのビジネスの場合、主要取引先のわがままに付き合い続けると、いろいろなひずみが出てきます。
利益率の低下を従業員に無理強いをして働かせることでカバーしようとするかもしれません。
その結果、離職率も上昇してしまい、新規採用のコスト、育成コストなどのムダな経費が経営を圧迫します。
このように歪がどこにあるのかは、外部に求めても仕方ありません。
「道」にのっとらないから、こうなるのです。
経営陣が自らの内面を深く見つめることで、「道」にかなった経営が出来るのです。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
toshiro@miyamacg.com