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益田 和久

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第160回 新年度にあたっての夢

2024/04/04

新年度になりました。
1年の計は元旦にありとはいいますが、ビジネスパーソン的には年度始めの4月を起点として、様々な計画を立てる人が多いのではないかと思います。
今年の4月1日はコロナが5類変更になってから初めての入社式。
ここ数年リアル開催を控えていたところが軒並み解禁となり、各地で工夫を凝らした入社式の様子が報道されていました。
新卒の初任給アップの報道も、ここのところよく目にします。
まさにアフターコロナの新しいステージが始まったと実感します。

4月1日付日本経済新聞の1面は、「夢を語り始めた経営者」というタイトルで3人の社長の談話、抱負が掲載されていました。
私が印象に残ったのは日立製作所の小島啓二社長のお話。
小島社長のキャリアは研究所からスタート。
研究所といっても手間のかかる作業も多く、危険と隣り合わせの現場もかなり経験された様子。
負荷が減り、楽しんで仕事をできれば世界にもっとイノベーションがあふれるはず。
現場から「きつい、汚い、怖い」という苦痛を解き放つことを叶えるべく夢として抱き続けてきたそうです。

研究所長だった2008年。
日立製作所は製造業で過去最大の赤字を抱えるという経営危機に直面します。
様々な事業売却が行われる過程で「研究事業も打ち切られてしまうのではないか」という不安が広がる中でも、夢は持ち続けた小島社長。同じ時期、日本企業はIT(情報技術)革命で一敗地に塗れます。
このことを踏まえ小島社長は「米国勢が主導したIT化はオフィスワーク中心の効率化である」。
「頭脳労働は人工知能(AI)に取って代わられる可能性もあるが肉体労働は必ず残る」という結論を導きます。

センサーで動きを解析し労働で生じる体の苦痛をなくす。
メタバースで工場を再現しアイデアを簡単に試すことで現場発のイノベーションを起こしやすくする。
「きつい、汚い、怖い」と言われてきた肉体労働が、面白いものに変わることで社会を変える原動力になる。
日本も新たなビジネスモデルを生み出し世界と勝負するときがくる。
そして最後にこう結論づけられています。
「日本の緻密な働き方に先端技術を組み合わせれば世界で勝てる」私なりに解釈すると「日本は、日本が培ってきた、日本らしい日本の強みを、技術によって伸ばせば良い」という認識です。
まさにものづくりの現場をよく見ながら、技術と夢と経営を掛け合わせてきた小島社長の力強い言葉でした。

弊社(私)も新年度にあたって、事業計画やコンテンツ開発を計画しましたが、改めて見つめ直してみると現実的なものばかりでした。
確かに実行可能なものでないと、業績向上には繋がりませんので仕方がないのですが、中長期的な夢がないのもつまらないなと思いました。
自社でアプリやシステムの開発ができませんが、アイデアを創発してビジネスパートナーを募ることはできそうな気がします。
このコラムを書き始めた2021年からすると、ITの世界は飛躍的に進化しました。
ITにどう向き合っていくのかは、どんなことがしたいか、どんな夢を持っているのかということが大きな影響を与えるのではないかと再確認した今日この頃です。