第143回 困ったときの老荘だのみ エピソード43
2024/03/12
毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの142回目では、「大器は晩成す」について検討してきました。
大器というものは何か、そして「道」を深く理解し、継続的に実行する重要さを老子は教えてくれています。
今回は「陰を負いて陽を抱く」です。
「陰を負いて陽を抱く」とは何か
今回は老子の言葉「陰を負いて陽を抱く」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は言います。
根元である「道」あるいは宇宙万物の法則といった方が宜しいでしょうか、から一が生まれます。
その一から二が生まれます。
そして二から三が生まれ、三から宇宙の万物が生まれます。
万物は、「陰」と「陽」とこの「両者を結びつける力」とからなっている、というのです。
「孤」、「寡」、「不穀」
人が誰でも忌み嫌う言葉、「孤」、「寡」、「不穀」を、君主は自己を呼ぶ名にするのです。
「孤」と親のない子を意味し、「寡」は徳が少ない人のこと、そして「不穀」は、不善という意味で、古来中国において君主が自分を呼ぶ言葉としてきたとのことです。
これらは自らをヘリ下り、戒めることを、より成長していこうという意味でしょう。
これは、現実世界では「損」が「益」に転じ、「益」は「損」に転ずるということでしょう。
力を誇る者はろくな末路をたどらない
最も重要なメッセージは、物事の一面のみが真実であるという“錯覚”を持たないということでしょう。
例えば今、会社の業績が良いからといってその力を誇る人は、だいたいにおいてろくな末路をたどりません。
例えば、ここ数十年間自動車メーカーでの不祥事が続いています。
経営トップが株主から訴えられるということありました。
しかし、そうした不正が明るみに出る前は経営者がマスコミの寵児となっていました。
実質を損なって見かけだけになってしまうことを、老子は数千年前に私たちに戒めていたのですね。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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