毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの133回目では、老子の言葉「手を加えない原木」について検討してきました。 今回は、同じく老子が残した言葉「死して滅びず」を検討してみます。
「死して滅びず」とは何か
今回は、「死して滅びず」をご説明します。
老子は言います。
無為自然を守って本姓を失わない者こそ、真の意味で生きながらえるのです。
たとえ肉体が滅んでも、その人は未来につながり、真に生き続ける者だと。
例えば芸術や偉業を達成した人の考えはいつまでも生き続け、肉体はたとえ滅んでも真に生き続けるといえるという意味です。
「道」に合致することがその前提となります。
「人を知る者は、せいぜい知者」
私たちは、「知者」というと賢くて、素晴らしい人というイメージを持っているのではないでしょうか。
老子は言います。
人を知る者はせいぜい「知者」であり、知の限界を知る者は真に「明知の人」であると。
老子のいう「明知」とは、優れた知恵のことです。
老子によると、人を理解しているということは、せいぜい物知り程度であり、「明知」を持つとはいえないということです。
つまり「道」を理解し、無為自然を受け容れることと、人や物事をよく記憶しているという程度の「知者」とは違うというのです。
真に「明知」の人は、克己心を持つので、真の強者であるというのです。
不満を知らない人は、真の富者であり、自己に打ち勝って無為に従う人は、本当の意味で意志が強い人だというのです。
私たちが「死して滅びず」の人になるには、こうした克己心や強い意志が必要なのですね。
私たちは、ちょっとしたことで腹を立て、不満を持ち、自己を貫き通すことをできないということには、言い訳を言います。
老子はそうした私たち一般の人を慈しみながらも、小さな自己の欲望に勝つことを推奨しているのです。
そのためには、「道」を理解しようと努め、無為自然を受け容れることが必要なのですね。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
toshiro@miyamacg.com