コラムの129回目では、老子の言葉「取ろうとすれば失う」を検討してきました。 老子は「聖人は物事の一面には執着をせず、作為をせずに自然に任せる」といいます。
今回は老子の言葉「強いものは必ず衰える」をご紹介します。
「強いものは必ず衰える」とは
老子は、「『道』に従って君主を助ける者は、武力を使って覇者となる策をとらず、兵を引いて他国と争うまいとする」といいます。
「戦をすることは、土地を荒らし、また飢饉を生む」とも老子は言い、真の戦(いくさ)上手はむやみに争ったりせず、戦いの目的、例えば「平穏で豊かな国づくりをする」などに集中するため、むやみに他者や他国と争いません。
目的を果たし、自負せず、功を誇らず、おごり高ぶりを避けるのが望ましいのだと伝えているのです。
老子のいう「道」、つまり道理を理解せずに武力に突き進むことは長続きせず、国を荒らすのです。
この老子の言葉とされている「強いものは必ず衰える」は、中国古典の「孫子(そんし)」とも共通するため、実際に老子がはじめていったかどうかは不明とされています。
最近の国際紛争を老子だったらどう考えるだろうか
仮の話になりますが、現在進行中のロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとハマスの争いなどを、もし老子が知ったならばどう考えるでしょうか。
読者の皆様もすでにおわかりでしょう。
老子をはじめ、世界の“古典”を私たち一般人、そしてビジネスパーソンが学ぶのはなぜでしょうか。
現在進行中の国際紛争などを考えるにあたって、古くから尊重されてきた「老子」、「荘子」といった古典、あるいはソクラテスやアリストテレスなどギリシャの哲学者たちが伝えてくれる道理や原理を理解した上で現実に起こっていることを観察する。
そして深く思考することの必要性ではないでしょうか。
これらはいずれも2,000年を超える年月を経て伝えられてきたことがらです。
老子の言葉でいえば「道」の存在を前提として世の中の事象を考えてみることを私たちに教えてくれます。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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