コラムの117回目では、老子の言葉「無理のない政治」を取り上げました。 老子は、優れた君主、それは私たちにとっては優れたリーダーとも取ることができます、は必要以上に臣下や人民(部下)をコントロールしないことが重要であると言います。
企業経営者や管理職にとっては、部下を信じて任せることの重要性を学ぶことができたようです。
今回は老子の言葉「大道廃れて仁義あり」をご紹介します。
「大道廃(すた)れて仁義あり」とは
老子の言う「大道廃れて仁義あり」は、無為自然の大道(自然の摂理)が無視されて、作為が世を支配するようになってからであるということです。
・大きな嘘が生まれたのは、我々が知ったかぶりをするからだ
・孝(行)や慈という徳目が説かれ出したのは、自然の情愛が失われてからだ
・忠臣があらわれたのは、無為の政治がなくなり、国が乱れたからだ
老子は「無為自然」、「天の摂理に従う」、「民(部下)の自由に任せる」といったことが損なわれたからこそ、「知ったかぶりをするな」とか、「親孝行をすべきだ」とか、「組織に尽くせ」などということが言われるようになったというのです。
言葉と行為はまったく別
私たちは耳ざわりが良いことを言うことで、まるでそれが実現しているような錯覚をすることがあるのではないでしょうか。
それが怖いのです。
筆者自身も、研修講師として日頃、ついつい「こうあるべき」、「~~しなければならない」といった言葉を使いがちです。
しかし、真に自らを律して自然な行為に移しているかと言われれば、必ずしもそうではありません。
これこそが老子のいう「知ったかぶり」ということなのでしょうね。
「〇〇を心がける」ということと、実行に移すこととは大きな隔たりがあります。
こうしたいわば単純なことですが、肝に銘じたいと思います。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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