コラムの116回目では、老子の言葉「根元に返る」を取り上げました。 老子は、万物は生々発展しているが、それは循環していていずれは「根元に返る」といいます。
それは「法則」であり、「静」という状態に戻ると言います。
それを体得した人物は生涯、無事でいられるとも言います。
今回は老子の言葉「無理のない政治」をご紹介します。
「無理のない政治」とは、君主のあるを忘れること
老子の言う「無理のない政治」は、以下のような各段階の君主を説明しています。
・もっとも優れた君主のもとでは、人民は君主の存在を忘れている
・次の段階のよい君主のもとでは、人民は君主を慕い、君主を讃える
・さらに下の段階の、悪い君主のもとでは、人民は君主を恐れる
・もっとも悪い君主のもとでは、人民は君主を軽蔑する
老子は言います「人民を生きるがままに放置する、それが君主たるの要諦(ようてい)である」と。
人民の立場から考えてみましょう。
君主が人民を信ずる気持ちがないと、人民は君主を信じないということです。
「無理のないマネジメント」とは、上司の存在を忘れること
老子の言う「無理のない政治」を応用して考えてみましょう。
これを会社経営、あるいは部門経営と置き換えてみてはどうでしょうか。
・もっとも優れた上司のもとでは、部下は上司の存在を忘れている
・次の段階のよい上司のもとでは、部下は上司を慕い、上司を讃える
・さらに下の段階の、悪い上司のもとでは、部下は上司を恐れる
・もっとも悪い上司のもとでは、部下は上司を軽蔑する
よい上司、マネジャー、経営者には「我(が)」がありません。
ですから部下を信じて、自由に活動してもらおうとします。
そのかわり、部下が仕事をしやすいように仕組みや環境を整え、部下を支援します。
仕事の目的や目標は、常にコミュニケーションを取り続けて共有します。
私たちがこうした基本を忘れた時に、マネジメントが歪みを生み出し、ものごとがうまくいきません。
くれぐれも注意したいものです。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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