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高松 秀樹

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第126回:ビール売り子と大手組織の関係

2023/05/13

先日、某大手ビール会社の人事部門の方々との打合せ時に、興味深い話を伺いました。

「野球場のビール売り子、特に東京ドームの売り子は、倍率20倍は超える人気職種なんです」

「若手採用難の時代に、採用、育成のヒントが詰まっているんだろうな、とウォッチしているんです」

とのこと。

「スタジアムの花」などとも呼ばれる売り子さん。

中には、芸能界にスカウトされる方も多く存在するようです。

報酬は、基本的に「固定給+歩合制」であり、時給や日給に、販売したビールの数だけ「インセンティブ」が加算されるという仕組み、とのことですが、

「カリスマ売り子になると、1試合3時間くらいの勤務で平均200杯以上販売し、高収入を獲得している」ようで、

その動きには、特徴があるようなのです。

◆身だしなみに気を配る
⇨決められた制服があるが、帽子や胸元に、ホームチームの優勝記念バッジや、引退した名選手のお手製プロマイドを貼り付けたりして、チームへの想いを可視化・共有

◆常連客をファンにする
⇨売り子の販売エリアはおおよそ固定化されているが、試合開始直後は比較的ゆるい状況なため、開始前はエリア外に座っている常連さんを探す時間にあてる。そして「見つけた~!会いたかった!」などと歓喜の声をあげながら小走りで向かい、最初の1杯を買ってもらう。さらに、「次の試合ではどの辺りに座るんですか?」と確認し、「また1番に駆けつけちゃいます!」の声がけをし、心をわしづかみにしちゃう

◆常に周囲の状況を把握する
⇨ビールを注ぐ際には、注ぎ口に目を配るのは時折で、ほとんどは相手の表情を見て、会話をする。その隙に、少し上の客席を見渡し、自分に声がけをしてくれそうな人を押さえておく。ビールを注ぐ時間自体は新人もカリスマもほぼ同じだが、この時間をどう過ごすかで差がつく。ビールを注ぎながら客席を見渡す間、自分に向かって手をあげる客がいれば満面の笑顔で大きく反応する。こうするだけで、その客は待機してくれる

◆日頃から体を鍛え、ハードな状況に備える
⇨生ビールサーバーはおよそ20kg。幼稚園児を常に背負って階段を上り下りしているようなもの。日頃から体を鍛えることで、試合終盤に他の売り子が行きたがらなくなる手薄な上段席に販売に行ける。上段席の客は、自分たちも上り下りが面倒なので、一人が頼むとその周囲の客も続けて発注する傾向にある

◆自分も楽しむ
→ホームチームがホームランを放ったり、ピンチを切り抜けたり、球場が盛り上がった時には、周囲のファンとともに飛び跳ねたり、歓喜の声を上げながらハイタッチをしたり、純粋に楽しむ。その姿を見た客は、好感を抱いてくれる

なるほど。

ただただ歩き回ってビールを売る。そんな動きをしている他者とは異なり、細部にまでこだわると大きな「差」が生まれるのですね。

まさにトップセールスの仕事の流儀、緻密な営業戦略そのものなのですね。

ちなみに、ビールが一番売れるのは、実は巨人戦より夏場に開催される「都市対抗野球」だそうで、応援スタンドは出場チームの大手企業にとって、「社員慰労の場」、「社員同士の交流の場」、「無料招待での顧客サービスの場」となっており、スタンド全体が「飲み会の場」と化すので、プロ野球応援よりビール他酒類の売上が断然多いとのこと。

しかも、社長や役員クラスも勢揃いしている中での「オフィシャルな飲み会の場」でもあるようで、社員さんの飲みのマナーも良く失態も犯すことがないので、売り子にとってはまさに天国なのだそう。

大手組織は、様々な場所で貢献しているのですね!