前回は、職場組織、つまり会社単位のレジリエンスの第1回目として「ビジョンの明確さ」についてお話してきました。
今回は「合理的な意思決定と実行管理」というテーマでお話をします。
合理的な意思決定と実行管理とは
VUCAという言葉があるように非常に変化の幅が大きく、その方向性が多様で見えづらい環境の中で、どのような意思決定をすることが合理的なのでしょうか。
また、合理的な実行管理とはどのようなものでしょうか。
意思決定には、必ずリスク(プラスのリスクも、マイナスのリスクも含みます)を伴います。
ある輸出企業の経営者の方が今年の年賀状に、「円安で輸入している原材料費負担が大変でした。
しかし、たまたま販売に関してはドル建てで行っていたのでメリットもありました」ということを書いていらっしゃいました。
マイナスのリスクとプラスのリスクが綺麗にバランスした状況だったようです。
この経営者の方は、こうしたことを予め分かっていたわけではなく、偶然だったようです。
意思決定は、経営者にとっては非常に神経を使う行為で、予測が出来る場合と出来ない場合があります。
では、合理的な意思決定とは何でしょうか。
私は3つの要素があると思います。
1.外部環境変化を動態的に把握出来ている
2.意思決定のプロセスに透明性があり、説明できる
3.従業員のモチベーション向上につながる
細かなご説明は省きますが、経営者の意思決定は最終的に従業員のモチベーションに結び付いていることが重要です。
部門であれば、部門長の意思決定が部下一人ひとりのやる気や顧客の笑顔につながっているということです。
実行管理は、「なぜ」が最重要
例えば営業という仕事の実行管理は、予算に対して実績を比較する「予実管理」ということになります。
「現時点で達成率何%か、不足分をどうするか」、「今期は何%はやりたいのか、そのための行動は」など、営業担当者や営業マネジャーは、こうした実行管理をしています。
その際、重要なのは「なぜか」ということです。
予算通りに推移した場合でも、そうでない場合でもその理由を明確にすることがもっとも重要です。
その理由によっては、修正プランを立案する必要もあるでしょう。
もともと無理なターゲット数値を上司が部下に押し付けている場合は、部下もやる気が起こりませんし、結果もついてきません。
達成すればすべてOK、達成できなければ部下に問題があるという単純な思考は長期的には会社を潰してしまいます。
これではまるで二流のスポーツコーチのようです。
勝てばよし、負ければダメという論法では選手は伸びません。
実行管理は、予算と実績の「差」を上司と部下、そして会社全体で深く考える良い機会なのです。そのためにも、「なぜ」ということを必ず検討しましょう。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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