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益田 和久

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第66回 FAX

2022/06/09

みなさんは、日常生活でFAXを使うことはありますか?このコラムにも何度も書いていますが、SNSやE-mailでのコミュニケーションが当たり前のようになっている現在、FAXを使う場面は少なくなってきているのではないでしょうか。
デジタルネイティブといわれる世代の人たちは、使ったことすらないかもしれません。

若い頃は、鹿児島の両親から「電話かけるとお金がかかるから用事があるならFAXで連絡しなさい」と言われていたのがなつかしい想い出です。
10年程前までは家庭用FAXを設置しておりましたが、最近ではE-FAX(メールソフトでFAXが送受信できる)があるので、相手がFAXを希望される場合はそちらを代用しています。
とはいえ、利用場面は限られていますね。
実際に家電量販店さんに話を聞いてみたところ、年々購入台数は減っているようですね。

そういう認識でおりましたが、先日の日本経済新聞掲載の「中小企業、なおFAXの山」の記事は、思わず二度見してしまいました。
弊社はお客様やビジネスパートナーとFAXでやりとりすることはほとんどなく、FAXを受信するのは広告宣伝のみですので(苦笑)「FAXの山」の感覚が今一つわからないのです。
ただ中小企業の方々が参加されるセミナーや会合等で「FAXは結構使っている」「こちらはFAXをやめたいけど相手が希望するなら仕方ない」とう話は聞いていたので、想定以上にデジタル化が進んでいないなぁという印象も受けます。

余談ですが、東京では保健所が都にコロナ感染者数報告をするのにFAXを使っていたことで、確認作業が漏れていたり重複報告があったりして一時期問題になりました。
マスコミから「何故この時代にFAXなのか」という問い合わせに、東京都が「セキュリティの問題」と回答していて思わず失笑した記憶があります。

じゃあ、防衛省や外務省は他国とやりとりするときにFAXを使っているのかということですが(苦笑)それはともかく、この保健所がFAX報告をしていた背景としては、政府がリリースしたシステムに、多忙の余りに乗り換えることができなかったことが実情のようです。
ただこのようなことは、角度を変えて捉えてみると「中小企業、なおFAXの山」につながってくることがわかります。

FAXの山になってしまうのは、EDI(電子受発注)が進んでいないことが大きな要因です。
大企業では当たり前のようになっていますが、2次、3次の下請けにまで浸透していないのが現状です。
またEDIを導入している中小企業でも紙は減らないそうです。

大企業各社のEDIは独自仕様で互換性がないので、画面を一度印刷して、それを自社のシステムに入力しているらしいのです。
だから実際はFAXと同じ(苦笑)。
なので、EDIの大口取引先が増えるほど業務が煩雑になってしまうという皮肉な現象があるようです。

1970年代から始まったEDIは80年代に業界ごとである程度の仕様が統一されたようですが、導入コストが高かったので、どうしても中小企業までは浸透しなかったようです。
それが2000年代になってIT環境が整ったことで、EDIを自社で開発するようになり、EDIが乱立状態になっており、かえって業務が煩雑になっているようです。

中小企業庁では、業界の垣根を越えて使えるEDIを提唱しているようですが、まだまだ先が見えないようです。
これは業界ごとに商慣習も違うことや業界内でも大手各社で仕様が違うこともありますが、やはりネックになるのは「コスト」。
システムを導入するときの初期コストもそうですが、使いこなしていくまでのかかる人や時間のかかるコストを考えたときに、中小企業は二の足を踏んでしまうわけです。

コロナ禍になり、デジタル化の推進が必須であることが再認識されたと思います。
ただどれだけ「推進は必須」であるというマインドだけが醸成されても、具体的に進めていくための「ツール、システム、スキル」は不可欠です。
ただ今のまま、各社がEDIを進めようとすると、自社が使いやすいだけのものが増えていき、かえって効率が悪くなるような気がします。

今こそ、業界リーダー、政府、自治体が連携し、将来ビジョンをもってDX化を進めていくことが急務ではないかと思う今日この頃です。