前回は、レジリエンスの高い人の特性と、スポーツ界でレジリエンスの高い選手について考えてみました。
今回は、ビジネス界でレジリエンスが高いと思われる事例をご紹介しましょう。
ビジネスにおいて、レジリエンスの高さを発揮する
〇経営者としてのレジリエンスとは何か
ビジネス界において、経営者、職人さんなど苦労話やサクセス・ストーリーが日経新聞の「私の履歴書」、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」など、いろいろなメディアで取り上げられています。
ここではそうしたメディアには出なかったにもかかわらず、筆者が感動したビジネスパーソンのことをご紹介しましょう。Aさんとしておきます。
Aさんの実家は書店チェーンを経営する成功者家族でした。Aさんは大学卒業後実家の書店チェーン経営に携わりました。そして社長になりました。Aさんにとっては家業を継ぐことは既定路線でした。経営は順調に見えたのですが、インターネットの普及で書籍・雑誌の紙媒体は、じり貧状態に陥りました。その結果、より時代の潮流に乗っていると思われるコピー機やプリンターなど情報機器を取り扱うことにしました。
ここに落とし穴がありました。情報機器は商品価値が3か月、いや1か月ごとに下落するような商品であり、また、在庫負担は膨大なものでした。書店ビジネスと比較すると、返品も出来ませんし、売れなければすぐに赤字となります。
こうした厳しい現実に直面しながらも、Aさんは地域貢献をモットーとする〇〇クラブといった団体や書店業界の地域代表としてのいわば本業以外の業務に追われるようになりました。結果として、経営に専念できる日は月にほんの数日という月も珍しくありませんでした。
会社の業況は日々悪化し、とうとう会社を手放さなければならなくなりました。サクセス・ストーリーどころか、典型的な転落ストーリーです。
ところがAさんのレジリエンスの高さは、ここから始まるのです。会社を手放すに際して、
自分の住む家屋敷など、抵当に入っているものすべてを手放すのですが、買い取ってくれ
る他の書店チェーンに2つの条件を出すのです。
①希望する従業員はすべて新しい会社で雇用して欲しい
②祖父の時代から続いた屋号は残してほしい
合意した買い手にすべてを手渡したAさんは、お世話になった方の離れといっても物置のような建物ですが、そこに移り再出発をします。妻や子供も彼の支えとなって、Aさんは再起する勇気を貰えたのです。
経営者とはどのようにあるべきかを私は彼の事例から学びました。ビジネスをやっていると、良い時ばかりではありません。
〇命まで取られることはない:筆者が経営危機に際して考えたこと
筆者は1991年の創業(「深山経営」)から、経営者として本年で30年が経過しました。教育事業を営む筆者の業界は景気変動に弱いのです。この30年の間、恥ずかしい話ですがいくつか景気の落ち込み、具体的にはリーマンショックや東日本大震災の影響で経営が危機的状況に陥りました。そのつど考え、実行したことは以下です。
1.命まで取られることはない
どのように経済的に困窮しても、例え家を抵当で取られても、大きな借金を抱えても、命まで取られることはないから、安心しよう。そして、現実から逃げまい。
2.友人への約束
筆者には学生時代からの親友が何人かいます。40年、いや50年の付き合いの親友もいます。その親友たちに伝えたことは、「もし俺が『金を貸してくれ』と言ったら、きっぱりと断って、友人関係を解消してくれ」というものでした。親友たちも納得してくれました。ですから経済的に厳しい時期でも対等の友人関係が続きました。
これは親友たちに対する最低限のマナーであると思い、実行してきました。おかげで彼らとも親友の関係が継続出来ています。
次回からは、最近、健康経営などでも見直されているワークエンゲージメントとレジリエンスの関係を探ってみます。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
尚、上記拙著をご希望の方は以下にメールをくだされば、謹呈します。(先着10名様)その際、メールのタイトルを、書籍希望とお書きください。
toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ